8月31日。

この文字を見るだけで、悲しい気持ちになる諸氏は多いだろう。地域によって異なるが、僕の生まれ育った東京では小・中・高校と夏休みの最終日だった。ゆく夏を惜しんで心が泣く日であり、宿題に追い回される日でもあった。あれから年月はずいぶんと経ったが、今日も『昭和40年男』の作業を追い込んでいるのだから進歩のない人生である。もう間もなく最終段階を迎える。

 

文句を言いながらも、家族総出で宿題をやっつけた。31日に慌ててないクールなヤツが信じられなかった僕だ。夏休みは後先考えずにとにかく目一杯遊んだ。宿題の存在が気になってはいるものの、8月の終盤まで見て見ぬふりをして過ごす。そうして迎えた最終日はいつも自分を責めた。「父さん、母さん、ごめんなさい。来年はしっかりと自分の力で宿題を終わらせます」と誓うものの、そんなもの来年の夏には関係ねえ。たっぷりと時間を使ったひと夏の経験は、いつもいつも大きな翼を与えてくれたのさ。

 

最近、宿題の代行が話題にのぼる。読者感想文が400文字で3,000円~4,000円と紹介しているサイトがあった。工作の代行が23,000円とある。うーむ、安くはないな。サイトが呼びかける利用者のモデルは、僕のようなふらちな者でなく自分自身の勉強を優先させたい子供たちだそうだ。受験勉強のために、宿題のような無駄な時間を使いたくないとの小学生が多いらしい。僕らの頃は中学受験するヤツなんてほとんどいなかったが、昨今僕の周囲でも受験の話はよく聞くし、家の近所の学習塾の夏休みは小学生が遅くまで頑張っている姿が見受けられる。俺たちのガキの頃と、教育事情はまるでさま変わりしたようだ。

 

元気に野山を駆け回ることの方が、将来の役に立つと僕は思う。その年齢の夏にしか経験できないことがきっとある。な〜んて言ったら現代では叱られてしまうのかもしれない。31歳になるうちのガキの頃も、中学受験なんて話はまったく眼中なしで、僕は翼を広げることを推奨していた。そして父親と変わらず、宿題でひーこら言っていたっけ。きっと彼も今日は悲しい気分を味わっていることだろう。

 

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