エアロスミスは初期が好きだ!!

このアルバムが発売された時は、すでに重度の洋楽ジャンキーだった。中2の2学期に発売され、『ダイヤトーン・ポップス・ベストテン』ではシングルカットされた『リメンバー』がチャートインして僕は好感を持った。その勢いのままお年玉で購入したのがこの『ナイト・イン・ザ・ラッツ』で、エアロとの本格的な付き合いが始まったアルバムだ。

これに続く『ロック・イン・ア・ハード・プレイス』とともにリアルタイムで受け入れた。この2作はエアロ全作品の中でワンツーの駄作というレッテルが貼られていて、評論家の大貫憲章さんによる『ナイト・イン・ザ・ラッツ』のライナーノーツに色濃く現れている。冒頭のリード文は“果たしてエアロに何が起こったのか。”と締められ、本文の締めも“ここでくじけては今までやってきた意味がない。僕は彼らの健闘を心から期待して止まない。”としている。うーむ、苦しい。

洋楽シーンの歴史に照らし合わせてもこの2作は面白い存在だ。中2の頃のロックシーンはディスコサウンドの全盛が続きながらも、イギリスからニューウェイブがガンガン来ていた。加えてトトやジャーニーなどの耳障りの良い商業ロックと呼ばれた連中もヒットチャートをかき回す。そんな折、キッスの『ラビン・ユー・ベイビー』やロッド・スチュワート『アイム・セクシー』のようにビッグネームのミュージシャンたちが次々に寝返った。そこに乗らなかった(乗れなかった!?)エアロで、『ナイト・イン・ザ・ラッツ』は良い言い方をすれば、ストレートでシンプルなロックを聞かせるアルバムである。そして、あの70年の終わりから80年代初めの洋楽大変革期をロックで駆け抜けたのはカッコいいったらない。続いた『ロック・イン・ア・ハード・プレイス』も寝返らなかった。が、まさしくどん底になり、ジョー・ペリーが抜けてしまうとエアロでない証明となった記念すべきアルバムだから、後の大復活を考えれば大きな意味を持つ。

と、そんな駄作を今も愛している僕で、ついつい針を落としてしまう。CDも買い揃えている僕だが、やはり初期のエアロはアナログ盤がいい。ファーストから『ナイト・イン・ザ・ラッツ』までの6枚が僕にとってのエアロである。そしてジョーのいない駄作を挟んだ後は、苦しみを超えメガヒットを連発するスーパーバンドとなった。そんな後期は嫌いとまで言わないが、初期の6枚ほど好きになれないへそ曲がりだ。映画『アルマゲドン』で流れた『ミス・ア・シング』に代表されるような、メロディアスなナンバーが強くなってきてどうも馴染めない。もともとメロディに優れた楽曲は初期にも多いが、そこはロックバンドとしてちょうどいいあたりで抑えていたのに、まるでポップチューンのような曲が格段に増えてしまった。あの大変革期をそっぽを向いて乗り切ったのにとぼやいてしまう偏屈なおっさんである。そっぽを向いた証となる『ナイト・イン・ザ・ラッツ』を愛して止まない昭和40年男なのさ。

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