【間もなく発売! 昭和40年男 2018年4月号】異常なほど多彩だったプラモデルたち。

昭和40年男 2018年4月号 表紙3月10日(土)発売予定の雑誌『昭和40年男』最新号では、巻頭で「ジャンクなプラモ」を特集しました。昨日は、なぜジャンクなプラモを取り上げたのか、について「身近さ」をキーワードに解説しましたが、今日はもうひとつのキーワード「多彩さ」から、特集に取り組んだ理由を語ってみたいと思います。

価格の面でも、販売手法の面でも、昭和40年男にとってとても身近な存在だったプラモデルですが、そのジャンルの多彩さも実に幅広い範囲に及んでいました。「子供が少しでも興味をもちそうなものは大抵プラモデル化されていた」と言うとちょっと過小評価で、むしろ「目につくものは片っ端からプラモデル化していた」と言っても過言ではないほどだったのです。

たとえば、子供たちの大好きな昆虫や動物などの生き物、おばけや妖怪などのオカルトものなどはその代表選手と言えるでしょうが、他にもジュニアスポーツサイクル(フラッシャー付きのド派手なやつ)とか、ラジカセ(当時の最高級機種)とか、扇風機とか、クーラーとか、スパイグッズとか、屋台とか、スポーツ用品とか、大名行列とか、神輿とか、雛人形とか、赤穂浪士とか…。また、ブームにも敏感で、スーパーカーブームが来ればそれに乗り、ツッパリブーム到来となればそれに乗るのは当たり前でした。

もちろん、テレビや映画に登場する乗り物やキャラクターもたくさんプラモ化されましたが、こうした版権モノは番組スポンサーになる必要があるなど多額の費用が必要。そのうえ番組が終わると売れなくなったり、番組自体が不人気で打切になってしまうこともままあり、そうなると在庫の山を抱えてしまいます。中小メーカーでは版権ものは難しかったのです。そこで登場するのがパチモノやニセモノ。微妙に”コレジャナイ感”を醸し出すアイテムの数々は、それを全面に打ち出すものや、こっそりとしのばせるものなど、立ち位置も様々だったりします。

一方、そのような版権ものには手を出さず、オリジナルのマシンやストーリーを構築するメーカーも登場してきました。特にアポロの月面着陸などで宇宙へのあこがれが高まっていたこと、『サンダーバード』などのSF特撮の影響も大きく、こうしたオリジナルSFマシンの人気も高まっていきました。

このような多彩なプラモが登場した背景には、プラモデルというプロダクトの製造方法が大きく関係しています。プラモデルは金属を切削加工して作った金型の中に、溶かした樹脂を射出することによって成型されるわけですが、この金型製作には多額の費用がかかります。すると、ひとつの金型でできるだけたくさんの製品を作りたくなる。そのためパッケージだけを変えてあたかも新製品のように売り出したり、樹脂の色を変えてみたり、金型をちょっと加工して別の製品にしてみたり、あるいは倒産したメーカーから金型を引き取った別のメーカーが、新たな製品として仕立て直して販売したり、ということが起こってくるのです。それこそ、プラモデルが怪しくも多彩なラインナップを構築する理由のひとつになりました。

このような経緯を経て、子供心に「一体、誰が買うのだろう?」と考えこんでしまうような、あるいは「これアリ!?」と思えるような不思議なモデル群(でもなぜか買ってしまった経験がないとは言わせません 笑)が登場したというわけです。こうしたモデルは、現代的な視点からはより珍奇なものに感じられますし、それがおもしろいからこそ今回特集で取り上げたことは否定できません。ですが、そこには社会のおおらかさ、子供たちをめぐる環境、マクロ的・ミクロ的な経済事情、当時の流行といった時代性がダイレクトに反映されていて、当時の子供たちをめぐるカルチャー事情を知るための第一級の資料でもあるのです。そして、それらに囲まれて育った昭和40年男たちは、何らかの影響を受けているに違いないのです。

単なる「懐かしさ」にとどまらない魅力が存在しているジャンクなプラモ。その全貌…とまではいきませんが、一部を紹介することで、昭和40年男たちのルーツの一端を垣間見ることができるのではないか――それがこの特集を組んだ理由です。昭和40年男なら、きっと楽しみつつも何か共感できるものがあるはずと自負していますので、ぜひ手にとってみていただければと思います。最新号は明後日の3月10日(土)発売です!

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で