深まる秋もあたたかい。

家を出て駅へと向かう道は、こんな感じに秋の深まりを感じさせてくれる。年々寒さに弱くなるおっさんだが、この感じは悪くない。呑んべえにとってベストマンスリーはまさしく今、11月だ。秋の恵みを堪能しつつ、つまみの数々が冬へと移行していくのに心が踊る。

居酒屋で働いていた頃、マンスリーメニューを作っていたことがある。板長とアイデアを出し合いながらその月のおすすめを決めていく。11月は冬への入り口を演出してゆくのだ。季節の移ろいを感じさせるメニューや、そのネーミングを考えるのは楽しい作業だった。

決定すると筆を使って崩し気味の文字でA4の紙に書く。10品前後のおすすめメニューを書き込んでいく作業はなかなかしびれる。今だったらタブレットなんか使って何度でも書き直すことができるが、当時はそんなのは夢のまた夢。ひとつ間違えればごみ箱行きになる。早めに出社して時間をかけて仕上げると、それをコピーしてテーブルに置くのだ。原本は1か月大切に保管するまるで作品である。習字を習ったわけじゃないからあくまで自分流の文字なのだが、素人ながら味を感じてもらえるように努力を繰り返して月ごとに上達した。

いつからか、その月を表す1ラインのコピーをつけるようになった。今日のタイトルは若き日にこれまた素人ながら懸命に取り組み、11月のメニューに書き込んだコピーだ。今見返すと稚拙ながら板長や調理場の高齢の方が喜んでくれ、僕自身もそれはそれはうれしかった。上野の大型店舗でのこの経験が、今の仕事に続くコピーのおもしろさに初めてハマった瞬間だったのだ。

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