包丁人味平が斬る化学調味料。

IMG_5354実家の本棚からこんなのが出てきた。桂木文ちゃん・石野真子ちゃんがグラビアを務め、キレイなまま本棚に刺してあった『GORO』は葬ったくせに、オンボロでもこれは捨てないお袋だ。漫画単行本や音楽雑誌も手をつけないが、あの2冊だけは有害な本と判断したのだろう。仕方なしだ。

本の右上にご注目いただきたい。30とあるのは価格である。僕の実家界隈は小さな商店街で、北村テレビ商会を中心に(ウソ)、職種のかぶらない数々の店が軒を並べていた。その中には爺さんと婆さんが2人で営んでいる古本屋があった。当時、沸点に向かって一直線だった週刊少年誌は発売の翌日には半額になる。さらに1日過ぎれば1/3に下がる。こうして僕は経済を学び、自分の欲求と財政の狭間でどのような判断を下すかを学んだ(笑)。

昭和の狭い古本屋ではこうした漫画の単行本や、興味を持った書籍なんかも手に入れた。さすがにご近所でエロ本を買えるはずはなかったが、何気なく眺める表紙に興奮したものだ。写真のようなカバーがない単行本はガクンと値が落ち、それを見逃さずにこうして底値の本を手に入れては喜んでいた。今の立派な古本屋のように全巻揃っているなんてのはほとんどなく、半端な本を客は思い思いに手に入れていく。『包丁人味平』はわりと好きな漫画で、実家の本棚には3冊の単行本が刺さっていた。

久しぶりにパラパラとめくってみると、もうすでにラーメンは現在と遜色なくこだわりのあるメニューだなと感心させられた。僕が知らないだけで、美味い一杯を求めて探した大人たちが存在したのだと綴っていて、ウンチクもしっかりと確立しているじゃないか。この号ではラーメン祭りという勝負でスープの優劣を争っている。そこで1度判定がくだった後に、1人の審査員が化学調味料を使ったスープに異議を申し立てるのだ。うーむ、今も昔も化学調味料は突っ込みどころになってしまうのだな。

僕は否定しない。商売をしていた家だから家族総出で支える。その中でお袋はスーパーエースである。バタバタと忙しい中で、育ち盛りのガキどもと酒好きの親父の食事と肴の用意までもこなす。そこで化学調味料がどれほどの役立ったか。それに昭和7年生まれでろくなものを食ってこなかった親父には、おひたしに振りかけるだけでガキの頃の貧しさから逃れられるそうで、食卓には必ず置いてありジャンキーのごとく振っていた。僕が蒲田でこよなく愛する昭和のラーメン店でもしっかりと「ハイミー、パッパッパ」で、確かに食後に舌に残る感じはあるものの、これが昭和だと言い聞かせて楽しんでいる。

と、我が家の食卓だけなく多くが世話になっていた頃に、バッサリと切り捨てるような筋を立てたのは見事だ。昭和40年男が小学生の頃に、グルメ漫画はすでに確立されていたのだ。全巻読み返してみたいですなあ。

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