ホテル・カリフォルニアの奇跡。


最新号の発売から2週間が経った。書店で懸命に勝負を続けているカワイイ分身たちよ、がんばれーっ。どうやら前号に比べると好調のように思えるが、まだまだこれからである。だからね。フッフッフ、今日もまた最新号の解説なんかしてPRするのじゃ。

連載特集である“夢、あふれていた俺たちの時代”で、昭和52年を取り上げた。この年にシングルカットされ、大ヒットした曲がイーグルスの『ホテル・カリフォルニア』だ。実はこの曲の詞は、様々な読み方というか解釈ができ、本人たちがしっかりと語りたがらないから余計にミステリアスな存在になっている。

昭和52年当時、小6の耳にリアルタイムで届いていたと記憶している。だが、本格的にハマることはなく、興味の中心はジュリーであり、解散宣言したキャンディーズであった。後にロックに興味を持つようになってこの曲と再会したときに、かつてよく流れていた曲だなと記憶を掘り起こした格好だった。好きになった曲は意味を知りたくなる。そんなロック小僧の心を知ってか、当時は訳詞の出版物が多かった。エアチェックした曲の意味を知るために、ロック寄りの書店に行き調べるということをよくやったよ。あの素晴らしい曲の詞なのだから、どれほどの素晴らしい世界だろうと期待に胸を膨らませて本を開いたのが、つい昨日のようだ。カワイイ中学時代のことだよーん。ところが…「?」。なんてつまらない歌詞なの。これって大好きだったテレビドラマの“高原へいらっしゃい”のテーマ曲じゃないのって、ガッカリした。中学生なんてそんなものさ。ところがどんどんロックの世界にはまっていき、ロック自体の歩んだ背景にも興味を持つようになった。点で聴いていたものがつながって、線になっていったのである。ハードロックの源流はブルースであるというカンタンなあたりからメラメラと燃え始め、書店に出かけては専門書の立ち読みで情報を集めた。そしてやっとこの曲の背景にある流れを知ったのである。

昭和52年を取り上げるのなら、時代を含めたこの曲に潜んでいるものをぜひ伝えたい。なにげなく聴いていた昭和40年男たちに僕が掘った世界を知ってほしい。担当の川俣との打ち合わせ経て、僕の解釈だけでなく、音楽畑を中心に渡り歩いてきた川俣のエッセンスが加わり、今回のようなページとなったのはうれしいことである。

俺たちは昭和を生きた。伸びしろが大きかった時代の奇跡は、現在には起こりにくくなっていると諦めていないか? 伸びしろが大きかった時代であるが、それなりにやっかいなことだって多かったはずだ。すべて時代のせいにして今がつまらないと嘆くのは簡単だ。だが、いい時代の空気を吸った恩恵や、あらゆるインフラが整備された今の時代に足りないものを真剣に考えれば、『ホテル・カリフォルニア』以上の奇跡も不可能ではないということだ。簡単なことでないのは今も昔も変わらんさってね。自分にまた喝を入れるページとなったのである。

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