若者に大きすぎる試練。

img_4064昨日は全日本ロードレースの最終戦で鈴鹿サーキットにいた。一昨日、昨日もこのブログはバイクレースブログとなってしまっているがご容赦いただきたい。昭和40年男の僕が、心を込めて付き合っている26歳の若者が命と人生をかけて戦ったのだ。

彼が参戦する国内ロードレースの最高峰『JSB1000』は年間でたったの8戦しかプログラムされておらず、今年は震災の影響でさらに1つ減ってしまった。20代の若者たちにとって少なすぎる勝負数だと思わないか。おっさんはその改革に取り組んで奮闘を続けているつもりだが、巨大組織を前に力不足が否めない。って、そんな話じゃない。昨日はこの4年間に渡って仕事をさせてもらっている渡辺一樹選手の最終戦について報告させていただく(長いよ)。

彼と初めて会ったのは4年前の夏のことで、イベントのトークショーでご一緒した。今に比べれば、ぼーっとして冴えないトークだったのが懐かしい。この翌年よりウチとカワサキが共催しているイベントのレギュラーゲストとして年間何本ものトークをこなすようになり、回を重ねるごとにドンドン鋭くなり、イベントの度にファンを獲得していった。そうしてファンになった、もともとはイベント参加者が昨日の決勝には多く訪れてくれ力を込めて応援してくれた。が、その注目のレースは激しいクラッシュで終った。

昨日は8周と20周の2レースがブログラムされた。1つ目を3位で終えた渡辺選手は仕上がりのよさを十分に見せてくれた。絶対王者を追い回すレースを展開し、もっとも早いラップタイムもたたき出すほどで、2レース目の長丁場に照準を合わせてきた彼にとっても手応えは十分だっただろう。2レース目の少し前に軽く話したときも頭を狙っていく自信をのぞかせた。僕は取れると信じて、カワサキのスタッフたちに表彰台の真ん中に立ったらトークショーをやることを提案し、ほぼその方向になっていた。準備は万端だ。僕はスターティンググリッドで終始笑顔を演じながらも、祈るように見守った。そしてスタート直前のコールがあり、僕は彼の肩を引き寄せ「行ってこい」と伝えた。大丈夫。きっと初のピンを取れる。あふれる涙を拭いながらプレスルームに入りモニターに集中した。

まさかの結末だった。スタートから果敢に攻めた1台が、1周目の最終コーナーの立ち上がりでバランスを崩し転倒してしまった。その直後を走っていた渡辺選手のマシンが乗り上げてしまい、渡辺選手はマシンから放り出された。最終コーナーから立ち上がってストレートに入っているのだから、トップスピードに向かっていく最中だ。かなりの長い距離を転がって行きやっと止まったところにマシンが激突したように見えた。背筋が凍りつくとはこのことで、プレスルームには大きな悲鳴とどよめきが起こった。動かない渡辺選手と中止になったレース。状況がわからない時間はやけに長く感じる。先輩がパソコンでいち早く映像をリプレイしてくれ、マシンはやはり彼に突っ込んだように見えた。救急車に乗せられた情報がピットに入り、意識はしっかりしているとのこと。ともかく最悪の事態ではなかったことに胸を撫で下ろした。結局入院もせずに済み、今日には本人とも連絡が取れて元気な様子だった。

こうして渡辺選手の2016年は終った。ニューマシンになった特別なシーズンだったのに、最終戦がノーポイントになってしまいシリーズランキング6位という結果だ。どれほどの無念だろう。繰り返すが、昨日の最終レースは間違いなく自分のすべてを賭けて取りにいくつもりだった。これまでのライダー人生の集大成にしようとしていたのを、僕は彼とのコミュニケーションから感じ取っていた。スタート前に涙があふれてしまったのはそのためだ。だがその強い意志を、あっけなく阻まれてしまったかっこうになる。どれだけ悔しいことだろう。ついさっき届いたメッセージには「優勝できずにすいませんでした」とあった。このブロ根性に感動しないはずがない。

今回の試練が彼の未来につながっていくようにと、今はただ祈るような気持ちで見守るだけだ。一樹ならきっとやれる!!

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4件のコメント

  1. 最終コーナーの立ち上がりでレースを観ていて、正直びっくりしました。
    トップスピードに持っていこうとする場面での転倒で、正直もうダメめかもしれない。。と
    思ってしまいました。
    渡辺一樹選手は大事に至らなかったようで、本当にほっとしています。
    ハスラム選手も捻挫を押してのレースだったのですね!?ナイスファイト!でした。
    レース1で、一人スプーンカーブでカワサキの大きな旗を振りまわしていて、レース終了時の
    ランでガッツポーズをもらっていたのでレース2も期待していたのですが。。。
    8耐といい今回の最終戦といい、来年に期待です!!

    • 本当にビックリしました。意識があると聞くまでの時間の長かったこと。
      ハスラム選手はあの大クラッシュ直後にホールショットを取るのだから、強靭なメンタルですね。しかもケガを負っての長丁場を2位でまとめるとは驚愕です。拍手!!

    • おっさん一同、応援しましょう。ありがとうございます。

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