マスターに憧れる昭和40年男。

深夜食堂単行本をコレクションするほど『深夜食堂』が好きだ。登場人物たちが店に持ち込んでくる喜怒哀楽はリアリティがあり、深夜に繰り広げられているという縛りが効いているのが心地よい。マスターの「あいよ」という返事やいつもタバコをくゆらせているのもいい。アグネス・ラムや竹の子族といった、俺たち世代にフィットするネタが多いのは、2コ上の作家さんなのだから、当然といえば当然かな。『深夜食堂』のご主人は客からマスターと呼ばれていて、きっと作者の年齢くらいの想定なのだろうと勝手に思い込んでいる。つまりちょっとだけ兄貴分ととらえて楽しんでいるだ。

マスターってのは男の永遠の憧れじゃなかろうか。『750ライダー』の「ピットイン」のマスターが最初に憧れた人かな。いつか茶店のマスターになるなんて夢描いた同世代は多かろう。僕にとってはもう一人、ちょっとマイナーなタイトルかもしれないがバンドマンガの最高傑作『気分はグルービー』のマスターにも強く憧れた。高校生たちの話をキチンと聞いてやれて、悩みに対しては説教でなくポーンとキーワードを投げ込む。そんな大人になりたかったが、うるさい説教親父になってしまったのは残念でならない (笑) 。そしてその高校生たちにガンガン酒を勧めるのもいい。もちろんタバコはマストアイテムだ。マスターって存在にタバコはなくてはならないのである。

それにしても時代は変わった。高校生と一緒にタバコをバンバン吸って、酒を呑ませるなんてのが少年誌に堂々と掲載されていたのだから、大らかだったと言ったらいいのだろうか。古今東西、マンガに限らずタバコは物語の中において重要な演出を担ってきたが、昨今は減少する一方だ。余談ながら「浅草秘密基地」の舞台となっているショットバー「FIGARO」のマスターも禁煙を始めてずいぶん経つ (笑) 。そんな時代に『深夜食堂』のマスターは素晴らしい。読んでいてわかるのは、きっと彼はヘビースモーカーだもの。世知辛い時代に逆らってそう描いているわけじゃなかろうが、まるで読み手に煙が流れてくるかのようでこれまた心地よい。俺たち世代のマスターってのはこうでなくちゃね。あっ、僕も禁煙生活が長いからマスターにはなれませんな。
 

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4件のコメント

  1. マスターよかダブりのヒサコさんに憧れたかな、じつは年上ってのが微妙に(笑)

    マスターは「めぞん一刻」の茶々丸のマスターが好きでした

    • おおーっ、うれしいコメントありがとうございます。僕もヒサコさんに恋してました(笑)。

  2. わたしの憧れのマスターは、
    西風先生作品の「GT Roman」のマスターです。
    エンスーたちの集う郊外の店。
    最高です。

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