昭和40年男の至福のとき。

刺身年に数回だが、馴染みの寿司屋に1人で行く。疲れが極限に至ったときやストレスの強い仕事にケリをつけた日など、自分を逃がしてやりたい気分の夜にだ。他にもいろんな逃げ方を持っていて、そのひとつでもっとも贅沢な選択が1人寿司屋である。僕の馴染みの店は、回っているところよりは高くつくが、銀座の1/3程度で飲み食いできる。ちなみに写真は左からコチ、ヒラメ、イワシの刺身で、これ以外にも刺身をいくつかいただき、握りをいただいて2時間ほどの長っ尻を楽しむ。

親父さんとおかみさんと様々な会話を楽しむ。長年寿司を握ってきた親父さんは会話時上手で、テンポよく話を引き出してくれる。寿司や魚のことをレクチャーしてくれ、まさしく至福の時間である。僕同様、1人で訪れる客が多いのはそんな親父さんの人柄だろう。そんな方々と親父さんの会話からも学べることは多々あり、年上の振る舞いから粋ってヤツを自然と学べたりする大人の社交場である。よくない会話がないわけでなく、その第1位は仕事の愚痴である。そんな無粋な話を持ち出すようなヤツはほとんどいないのだが、ごく稀にこんな極上の社交場にも混じることがあり、酒も寿司もまずくなってしまう。2~3人で来た若い客にたまに見かけるが、そんなときはまあ仕方なしと諦めて、早めに引き上げることにしている

小さな店だから客が僕だけということも珍しくない。となると飲食店ではタブーとされる政治の話が解禁になる。政治家や官僚たちとつながりがあるのも親父さんの人柄と寿司屋という商売柄だろうか。そうしたつき合いから鍛えられた感性と、独自の視点でバサバサと切り付けてくれて、これまたとても勉強になる。疲れを癒しに来たとはいえ、背筋を伸ばして気持ちは引き締まったまま過ごすことになるのだが、普段と違った頭を使うのはそれはそれで心地よく、結果的に元気が湧いてくる。そんな飲食店が必要な年齢になったのだ。

もともと1人で呑むのが好きな暗いヤツだ(笑)。中島みゆきさんの『狼になりたい』に習って、深夜の吉野家でビールを呑んだ若かりし日々がある。侘しさを噛み締めるのに格好の場所だった。賑やかな居酒屋で1人でいるとあの日の自分とシンクロする気分になれる。そんな1人用居酒屋も寿司屋と同様に何店か持っている僕だ。大人っていものですな。

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