第59回 勝田全国マラソン、完走。

さぶい。常磐線に揺られ、朝10時前に茨城県勝田駅に降り立った。
こんなに寒い中走るの? 思わずそんな問いかけを自分にしてしまう
ほどの冷気ともいえる風が僕を包んでいた。そう、ずいぶんと騒いできた
編集部&読者によるスペシャルチャレンジの第2弾となる、42.195kmの
旅が始まろうとしていた。
参加頂いたタメ年はたった1人ではあるものの、コイツは心強いぜ。
ごった返す会場で残念なことに会えなかったが、昨日書き込んでくれた
とおりすばらしい結果を残している。パチパチパチ。

たぶん東京マラソンの成果だろう、年々参加者が増えている。僕は
15年以上前からこの大会『勝田全国マラソン』とつき合っているから、
その波は肌で感じる。日本最大の大会を仕掛けた石原都知事の功績だよ。
女性ランナーも増えた。ただ、大会側はもう少し考えた方がいいね。
女子トイレや着替えスペースの拡充といったことで、もっともっと
女性ランナーが参加しやすくなり、華やかになることで男性ランナーも
こぞって参加するといういいスパイラルが生まれるはずだ。
まあ、これ以上増えることが良いかは少々疑問だが、キャパは
まだまだあるように感じる。

さあ、いよいよだとフルマラソンの部(10kmの部もある)のスタートラインに
立った老若男女は1万人を超えた。スゲー人数だよ。でもこの中に読者さんが
ひとりいるんだ。うん、なんだか感動的だね(くどいが会いたかったなあ、ぜひ来年)。
帯状になったランナーがスタートを切った。もうこうなったら覚悟を決めるのじゃ
って遅くないか。年齢とともに臆病虫さんが顔を出す機会が増えている。
それを払拭するために努力を繰り返していないと、ドンドンと爺さんになって
いくのだと思う。決して悪いことでない。渋さというか肩の力が抜けたいい爺さんは
カッコイイもの。「おい若いの、そいつは無理だよ。やめときな」といえる爺さん。
ここまでいけば臆病虫でなく、余裕になる。45歳なんざその狭間で迷っているんじゃ
ないかな。新しい一歩が怖かったり、変化を善としない日常だったり、一歩引く場面が
増えていて、しかも仕方ないことだと判断できるくらいの経験は積んできたから
ついつい流してしまう。だけど突っ張れるときは突っ張りたいと、前進を望もうとする
自分もまだ元気にいる。己の中での比率として、突っ張る自分が多いヤツの方が
渋い爺さんになる日はまだ遠い。でも最終的には、突き進んだ量が多いヤツの方が
到達は遅くとも完成度の高い渋さをまとえるはず。な〜んてことを自分に言い聞かせて
スタートを切ったのさ。

つうのもね、やっぱり臆病になっているのよ。去年はフルを完走してケガをした。
2ヶ月ほど痛みがひかず、それは11月の日本橋〜箱根企画で軽く再発した。
さらにここで書いてきたように12月と1月にケガが重なり、ほとんど鍛えられていない体で
42.195kmの旅に出るのだ。走り出せば無理をするのは自分が一番わかっている。
ほらね、こんなときに「おい、今年はやめておけ」って、渋い爺さんだったら軽〜く言える。
「無理して去年よりひどいケガをしたらどうするのじゃ」ってね。去年のケガは経験として
強く蓄積されているのである。

そんな臆病虫さんを振り切ってスタートを切ったものの、入りの10kmは
1時間6分36秒もかかった。遅いっ、遅すぎる。単純な問題として体が
どうしようもないからということも大きいが、ビビっている自分も存在していた。
これじゃーイカン、次の10kmを少しがんばるも1時間4分20秒。だーっ、まずい。
実はこの10kmはもう少し出ようと思ったのだけど、寒さにやられた。真っ青な
空に、みるみるうちに低い雲が立ちこめて風が強くなった。太陽というのは
実にあたたかいものなんだねと再確認させる雲の遮断だった。ただ、ここまで
きて努力していないわりには足が元気で、体調もいい。うーん、2日連続の
禁酒効果か? 後半へと突入する10kmもさっきより押してみた。
1時間42秒だ。よしよし、遅いなりに伸びてきたぞ。フルマラソンには
名ゼリフがある。
 「折り返し地点は35km」
十何本も走っているベテランは、この言葉が嫌というほどわかっている。
(って、4時間程度のランナーがなに言ってるの)
30km過ぎたあたりから疲労とか痛みとかがドスンドスンと来る。だが
なんとここもがんばれて1時間27秒と、10kmをひとつクリアするたび
タイムがあがっていくという快挙を達成できた。まあ、序盤が遅すぎた
臆病虫さんにやられすぎたということではあるが、それでも後半に向けて
押せたのは我ながらうれしい結果だった。だってね、苦しさは10kmごとに
強くなるのだから。残りの2.195kmは残念なことに交通規制が解除されて
しまい、13分42秒もかかってしまったけど、信号待ちも足は止めずその場で
踏みながら“完走”を果たせた。

4時間25分47秒で順位は真ん中くらい。成績としては悔しいけれど、
棄権ばかりを考えていた状況の中でここまでにまとめられたのは
大満足している。もし『昭和40年男』の誌面で謳っていなかったら、
今年は走っていなかっただろう。そうだったら、昨日のゴールの感動も、
今日のすがすがしさもない。そして、ひとつ臆病虫君に屈したことを
カウントしなければならなかったのだ。ああ、よかったよ。前に進むか、
引くか。たったそれだけの決断が、その先で大きな差異になっていることが、
身をもって経験できた今年のフルマラソンでした。

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