遺作となってしまった絶品レモン。

小笠原島の魅力にすっかり取りつかれた知り合いのイラストレーターが、毎年行くたびに送ってくれるのが絶品の『小笠原レモン』だ。完熟してから収穫するせいだろう、でかくて甘みがあって味が濃く、驚くほど薄い皮までがうまい。ずっと愛している下町のナポレオン『いいちこ』を、素晴らしいカクテルへと昇格させる。コイツをくし切りにして、大切にちょっとずつ絞り入れる。絞り切ったら皮を放り込んで、しばらくそのまま高級カクテルに昇格した焼酎をいただき、そろそろかなというタイミングで皮を頬張る。もう感激のうまさなのだ。

たかがレモンと言うなかれ。食べたらそれはビックリする。前回いただいた時はいくつかを皮ごとジューサーにかけて、そいつをジップロックにいれて平に伸ばして冷凍。少しずつ割って焼酎に入れると徐々に解けていって、その変化を楽しみながらいただくなんてのを楽しんだ。『小笠原レモン』を知ってからは、防カビ剤にまみれた輸入レモンはまったく別の食い物に変わった。このうまさを知ったせいで、普段焼酎に入れるレモンも普通のレモン果汁の3〜4倍のお値段のついた、国産ストレートタイプを求めるようになってしまったのだ。財布には痛いが、こうした贅沢はクオリティに出会えたからであり、この歳になったからならではなのだと考えれば悪くない。

そしてチョッピリ寂しいメッセージが添えられていた。
「今回のレモンは、小笠原は父島 (故)遠藤義夫さんの遺作なので、感謝のキモチで南を向いてお礼を言ってから スミズミまでよく味わって食べて下さい」と。
僕のレモン観を根こそぎ変えてしまった方が亡くなったということなのかと、言われたとおり大切に味わっている。

レモン

 送られてきた中に1つには、こんな素晴らしい細工がしてあった。クリエイターの遊び心が炸裂した、これは作品である(笑)。生産者の遺作ということもあり敬意を評して、このブログに記録させていただくことにした。

遠い遠い南の島で汗を流している姿を見たことはないものの、このうまさに風貌の想像が膨らんでいく。きっと強くてやさしい方だったのだろうなんて、呑みながらどんどん膨んでゆく。安らかにお眠りください。丁寧に育てたその心を感じながら、素晴らしいうまさを記憶に留めておくように、いただきま〜す。

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