親父の大好物だった湯豆腐を愛する昭和40年男。

このブログで食い物ネタといえば蕎麦の登場が多く、昨日もふれたばかりだ。同世代に蕎麦好きが多く共感が得られるネタだからで、比べて今日の主役の湯豆腐はあまり食いつきはよくなさそうだが…、まあ、おつき合いくださいな。

湯豆腐まずはご覧いただいている我が家の湯豆腐を解説しよう。鍋に張ったたっぷりの水に昆布をどちゃどちゃと入れる。真ん中の湯のみにはたっぷりの鰹節に醤油を注ぎ、その上に包丁でやさしく丁寧に刻んだネギの小口切りをたっぷりと入れて、弱火でじっくりとグラグラとさせる。昆布のいいだしが出て、湯のみの中は3つの味が調和して実にいいお味になる。これで準備はOKだ。豆腐は絶対に木綿で、しかも滑らかタイプでない角に頭をぶつけたら痛いくらいの固いヤツがいい。豆腐はたっぷりの昆布を吸う。そこに鰹節のだしをたっぷりと含んだこのタレと、そいつを吸って香り高くなったネギと一緒に豆腐をいただく。その素晴らしさは、何度口にしても日本人であることを神に感謝する至福の時で、我が家ではもっとも頻繁に登場するメニューだ。大晦日は夕方からずーっとグラグラさせながら『紅白歌合戦』で涙して、年を越しても食っているなんてのを正しい年越しとするぐらい、我が家ではごちそうと評価されている。

鱈豆腐以外には、薄塩のいい鱈が見つかればそれを入れる。この写真のようなのは東京では手に入れるのが難しく、生の鱈に開始の数時間前に一塩して使うことが多い。それとキノコ類を適当に用意する。ここ近年よく見かけるようになった生の大きめのなめこは、見つければ必ず入れる。白菜や春菊、ネギといった定番野菜は一切入れない。豆腐の味の邪魔になるのだ。その点、鱈とキノコ類は豆腐の味をグーンと高めてくれる。

小さな頃は、親父が好んでいた淡白なものは全般嫌いだった。脂まみれで肉が多く入っているおかずが上で魚は下。こんな精進料理みたいな湯豆腐なんかもうたまったもんじゃない。それでも天才子供料理人だった僕(嘘)は、湯豆腐丼なる珍品を生み出し、必ず三杯メシをかっ食らっていた。豆腐をグチャグチャと細かくして、たれとネギを混ぜてご飯にぶっかける。さらにグチャグチャと混ぜると、見た目はよくないながら結構いける丼ものになる。僕と弟はこうして親父の大好物につき合ってたのだ。今となっては当時の親父以上にこの料理を愛していると思う。そして小中学生の頃はいやがっていた息子も、大晦日はコイツをバクバク食らいながら日本酒をチビチビ呑るのだから、三代続いた湯豆腐ジャンキーだ。

いい塩鱈と生の鱈も見かけなくなる4月の終わりくらいから、9月末頃まではつらいことに湯豆腐が出来ない季節だ。夏は好きだが、湯豆腐がないのは寂しい。ところが先日、8月だっていうのにこんなにきれいな北海道産の塩鱈が見つかり、例年にない早い段階で湯豆腐シーズンに突入した。約4ヵ月ぶりとなった再会のうれしいこと。暑さなんかぶっ飛ばして、ついでにダイエットを一時中断して食いまくったのだった。と、こんなに喜んでいる僕だが、周囲に僕ほどの湯豆腐好きはあまりいない。弟はさすがに同じ境遇で育ったおかげで、息子たちにブーブー言われながらも湯豆腐道を貫いていてさすが北村の男である。

さて、湯豆腐の奥深い世界をご存知でないみなさん。おっさん化した舌だからこそ、この味わいはきっと楽しめるはずですぞ。この冬はぜひ、湯豆腐ジャンキーになって僕と気持ちを共有しましょう(笑)。

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6件のコメント

  1. オレの親父も好物だったなぁ。
    編集長んとこみたく気の利いたものではなかった。
    昆布と木綿豆腐のみ。
    あとはなんのアレンジもないネギポン酢。
    アツアツをハフハフ言いながら口に運んで、日本酒で流す。
    その時の親父が幸せそうに見えた。
    そしてかくいうオレにもそのDNAが。( ̄▽ ̄)

    • 平成乃昭和さん、ありがとうございます。
      お父さんの姿が目に浮かびます。僕らもその姿が似合うおっさんになったのですなあ。

  2. 俺も小さい頃はブルーだったな。
    どうやってご飯食うのと。
    未だにご飯のおかずにはならないが、つまみとしては大好きだよ。
    今度是非一緒に(^_^ゞ

    • 浅野さん、ありがとうございます。
      僕は湯豆腐の翌朝はいまだにあまりでご飯をかっ込みます。うまいですよ。
      いいですね、タメ年湯豆腐。是非っ!

  3. 真夏の湯豆腐最高です!小学生の夏休み自分で作って食べてました。祖母にバカと言われましたが、大汗かきながら食べると気持ちいい。w (江角さんのマネージャーにバカ息子と書かれそうですね?)
    玉うどんもいれます。

    • レオ貴さん、ありがとうございます。
      小学生で夏休みに食すとは、筋金入りの湯豆腐男ですね。うどんまで入れるとは、師匠と呼ばせてください。

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