出版社として歩んだ10年。〜誕生!!『タンデムスタイル』〜

うちの社が出版事業に手を出して10周年を迎えたので、
間にいろいろはさみつつ、これまでのことを振り返りながらつづっている。

プロジェクトチームが結成され、企画会議が繰り返された。
これまでの2冊とは違い、俺だけの感に頼ることなくみんなで意見や企画を持ち寄った。
そのころのバイクシーンは、表参道あたりのオシャレな男の子たちがオピニオンリーダーとなり、
そろそろフォロワーの時代が来るという局面を迎えていた。
バイクはファッションのツールというトレンドがあったのだ。
プロジェクトチームは、この層は間違いなくやがてほとんどが降りてしまうだろうと予想した。
だったらその層にバイクの楽しみを提供して降りないようにするという、
これまでにまったくないテーマを設定したのだった。

テーマが決まり雑誌名は“1人で風になる”というお決まりのバイクの世界でなく、
もう少しライトな感覚で楽しんでもらおうという意味から、
2人乗りを意味する“タンデム”を用い、その世界観を感じてもらおうと『タンデムスタイル』と命名した。
よっしゃー、これでいこう。
会社を売ってくれた社長と問屋(取次)担当に、早速交渉にいくように命じたのだが…。
「ダメです。無理です」と、連絡が入った。
うちが買った会社の持っているコードは、
あくまで『レディスバイク』でその復活でなければダメだと言うのだ。
 「おいおい、せっかくの高い買い物をどうしてくれるんでい。
 冗談じゃねーや、会社が版元になってやっと1発目の出版物だってのに」
確かに買った会社が持っていたコードのブランド名はそうだが、
「えーっ、そういうことなの?」という素人丸出しの俺だった。

一瞬考えてみたが、バイクというカテゴリーとはいえ
女性誌を作る自信はまったくなかった。
それに、記念すべき当社初の出版事業なのだ。
バイクという縛りはあるものの、誰もが楽しめる広い読者にぶつけたいじゃないか。
雑誌名変更でなんとかならないかと再度掛け合い、渋々だがなんとかOKとなった。
やったーと創刊号の制作に入ったが、これが至難を極めたのだ。

これまでの2冊には確固たるテーマがあり、そこを好みそうなターゲットを抽出して作ればいい。
『タンデムスタイル』は先に述べたとおり、もともと走りや遠出など興味がなく
ファッション感覚で乗っているライダーを別の次元へと誘うのだ。
そうしたライダーが興味を持つだろうというテイストページと
コンセプトであるバイクの良さを伝えるまじめなページをちりばめてバランスを取らなければならず
考えれば考えるほど難しい。
それでも少しずつまとめ上げ、創刊号のリリースとなったのだ。

反省点は多々あるものの、まったく新しい世界観はつくれたという満足感があった。
ただし、大きな痛みをともなった出発になってしまったのだ。

続く

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