絶食。

いやいや、昨日は参ったねえ。
俺は携帯で小説を書かけないことがわかったよ。
気を取り直して。

本日のタイトルにビックリした方も多いんじゃないかな。
俺ね、〆切のときにたまにこれやるのよ。

話は突然飛ぶよ。
昔々、大好きだったドラマ『熱中時代』の話。
北野先生は校長先生宅に下宿していたじゃないですか。
それでお正月の2日間、校長先生が絶食するのを覚えてない?
なんだか鮮明に覚えていて、んなことやったら死んじゃうよ、
大人ってスゲーって、そのシーンが焼き付いていた。
もののない時代の記憶を忘れないために、自分に課すという目的も併せて、
ふむふむ大人ってスゲーってね。
俺もいつか大人になったら絶食するんだ。

そして大人になった俺は雑誌『ターザン』の特集で絶食に出くわした。
デトックス作用が大きいと紹介していて、
うんうん、毒々しい男だから一丁やってみるかと、〆切を利用してやってみた。
以来、もう5年くらいになるかな、年に1〜2回がんばっている。
〆切を利用してトライするのは、編集部に缶詰になるから誘惑が少ないのと
ちょっとしたメリットがあるから。
それは眠くならないことだ。
極端に睡眠を削っているから、食べるとどうしても睡魔に襲われてしまい、能率が落ちる。
とくに最終の最終にかかると、誤字脱字のチェックが主な作業になるから、余計に睡魔に襲われやすいのだ。
ところがね、食べなければ不意に襲ってくるあの睡魔はまったく感じることはなく、ほぼ効率が落ちない。
単純に食べている時間も圧縮できるから、
時間換算すると1日で3〜4時間多く仕事ができる感覚がある。
締め切り時の睡眠時間は多くてそのくらいだから、
絶食すると1にち24時間戦う、リゲインのような男になれるのだ。

健康上の効果は正直いってよくわからない。
デトックス効果といっても目に見えてわかるものではないし、
健康診断の数値だって別によろしくなるわけじゃない。
ましてや、痩せるというのは俺の場合絶対にない。
必ず100%、完璧にリバウンドするからね。

だからといって〆切時のパワーを得るためがだけでやるのではないのだ。
一番の楽しみは、舌だね。
絶食明けの舌はものすごくいろんな味がわかるようになっていて、
スーパー人間になった気分なりですよ。
普段の舌がどれだけ悪いのかということを認識させてくれる。
研ぎすまされた味覚を、一瞬だけ取り戻せるのが楽しいのだ。
ビールなんか初めて呑んだあの日のテイストが戻ってくるのだから。
とにかく絶食の楽しみは、“鋭敏な舌感覚を一瞬だけ取り戻す”これに尽きる。

やり方だよーん。
前日は夜7時までに夕食を済ませる。
翌日と翌々日は、お茶と水だけで過ごす。
これね、雑誌とか見るとよくないみたいだから、よい子はマネしないでください。
もっともキツイのは1日目の昼時で、進むにつれて徐々に空腹感は軽くなる。
2日目の夜なんかもう空腹慣れというか、まったくキツさを感じなくなる。
明けの朝は野菜ジュースをゆっくり呑む。
昼は今回だと得意の布屋更科で更科そば
(そばの皮を完全に剥いて打った白いそば)
の大盛りをいただいた。
これがね、至福なんよ。

始めはそばだけでいただく。
くーっ、うまい。
そばは香りを楽しむなんていうけど、普段はここまで感じられないもの。
次にそば汁をちょっとだけつける。
江戸っ子より少ないくらい。
もう、つゆの成分を全部言葉にできるんじゃないかくらい、舌が喜ぶ。
ネギを入れると、おーっ、なんてネギって偉大なんじゃーとなる。
次にわさびを入れると、もうあなたとの一生離れませーんという感動に包まれる。
そば湯で仕上げるともう涙ものだね。
という具合で、きのうはこんな味覚のフルコース味わったのである。

どう? やってみたくなったでしょ?
俺のやり方はあまり正しくないので、
トライする方はよく資料などを見てからね。
健闘を祈る。

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