『男はつらいよ』の喜び。

男はつらいよ足かけ2年に渡って買い続けてきた、『男はつらいよ』のDVDマガジン最終巻が去年の暮れに発売となり、僕は長年の念願だった寅さんのすべてを手に入れた。全部買うともらえるセリフ入りブロマイドにはまだ応募していないけど、きっと宝物になるだろう。それと、付録でついていた当時のポスターがこれまたうれしい。いつか広~い書斎を作って公開順に全部張るのが夢となった(笑)。

昭和40年男にとって寅さんはどんな存在だろうか。僕は幼少の頃に、親父が夢中になってテレビで観ているのをなんとなく一緒に眺めていた。思春期を迎えた頃は完全に興味から外れ、やがて所帯を持つとその味わいを好むようになり、年月の経過とともに徐々に虜になってしまい、親父と同じようにテレビで放送されては観るようになった。そんな具合で、劇場で観たことがないのはファンとは言い難いが、僕にとって寅さんは幼少よりテレビで観るものになっていて、だから今回のDVDマガジンは大歓迎だった。

2時間の空き時間を作るのはなかなか困難で、まだほとんどが飾り物である。だが、コレクター世代としてはDVDのボックスが50個並んでいるだけでもうれしいもので、ニヤニヤしながら眺めるのも楽しい。つい先日、思いがけず時間が作れて、よーし観ようと贅沢な時間を演出した。50冊のマガジンからどれにしようかと吟味しているだけで幸せいっぱいで、ヒロインとロケ地などから選ぶ時間はまさに至福だ。なんてったって50巻もあるのだ。悩みに悩んで選んだのは、中村雅俊さんと大竹しのぶさんが出演している『寅次郎頑張れ!』だ。77年の冬の作品だから、僕らは小6の頃。まだ小学生の満男がベルボトムのジーンズをはいているのに思わず頷いてしまう。そう、寅さんの画面には時代が封じ込められているのがいい。加えて、ロケ地の美しさと当時の風景をしっかりと伝えてくれるのがうれしく、『寅次郎頑張れ!』では長崎県の平戸でロケを行っていてこれがすばらしい。なにも飾りのない、人の営みがしっかりと染み付いた街を巧みに切り取っている。今年は長崎でイベントがあるから、できれば足を伸ばしてみたいものだ。

中村雅俊さんと大竹しのぶさんも実にいい。中村雅俊さんは、僕らがよく知っている彼とほとんど変わらないのだが、大竹さんの若さと初々しさったらたまらない。今の時代では通用しないだろう、恋の恥じらいを目一杯描いていて、観ているこっちまで恥ずかしくなってくるほど。日本の風景同様、男女関係の変化も大きいのだね。

寅さんの振られっぷりも、大きな魅力だ。パターンとしては、寅さんの一方的な勘違いで脈ありと突き進んで玉砕するのと、双方思いあっているのに微妙なすれ違いになるのと、大きく2つに分かれる。『寅次郎頑張れ!』は完璧な振られパターンの方で、これはこれでスッキリとしていてカッチョよさも感じてしまう。冬公開の作品は、暮れに振られて旅に出て初詣でにぎわう場所で商売をして幕を閉じるのだが、このハターンもまたグッと来るのである。ひとりぼっちの年越しでも、きっと寅さんの周りには人があふれて幸せなんだろうなと想像すると楽しいし、いつか柴又の実家で年越しさせてあげたいなとの想いが交錯する。うーむ、すばらしいパッケージだ。

寅さんに魅力を感じて心震える自分でよかったと、幼少のときに押し込んでくれた親父に感謝した。そして、こんな気持ちになれるソフトを50本も手に入れるキッカケとなった、このDVDマガジンもありがたく感じているほど。月に1本くらいは観たいとワクワクする一方で、もったいないとも思ってしまう貧乏性な僕だったりする。

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