第2号の制作現場を振り返る。〜もったいない精神〜

『タメ年のスゴイやつ』(P6〜9)に掲載した
杉本哲太さんのインタビュー記事についての現場だより、その2回目である。

ずいぶん長い前置きになったが
俺は杉本哲太さんのインタビューを担当することになった。
めでたしめでたし。

この日の肝は、演じるということへの俺の正直な疑問へと、インタビューをしながら変化していった。
というのもすごく真剣に応えてくれるものだから、
ずいぶんとズケズケと入り込んで、後半には対談に展開していけた。
当初の狙いとは異なるのが、これだから現場は楽しい。
ラッキーだったのはちょうど前日に、彼がナレーターを担当した番組の再放送があって録画したこと。
2月の日の出はまだ遅いこの時期に、
外はもう明るくなっていたのだが、ここでわずかな睡眠を選ぶかビデオを見るかが悩みどころ。
少しでも寝てスッキリとした頭でいくという選択ももちろんあり。
しかも役者としての人生を聞きにいくのに、
ナレーターの仕事だからそれほど重要ではないと判断して、さあ少しでも寝ようとしたのだが…。

こういうときに出てくるのが“もったいない”精神なんだよね。
せっかく違う角度での仕事のビデオがあるのにもったいない。
寝る時間を削れば、もっと杉本さんのことを理解できるかもしれないのにもったいない。
とにかく、いい仕事につなげないともったいない。
こうしてどんどん“もったいない”気分が盛り上がってしまう。
で、結局眠い目をこすりながら見てみると…、これ大正解で、彼の仕事の深さを知った気がした。
タイミングよく言葉を映像に乗せていくリズムがいい。
リズムというより、日本的な“間”に近いかな。

演技という翼をもがれた役者が、
あれだけ演じきれるということを知ったのといないのとでは、
このインタビューはずいぶんと変わっていたと思う。
実際、このインタビュー中にナレーションの印象に残った部分をいうと、
そこにすごくこだわったとの返答をいただけた。
「わかるんものなんですね」と。
偉そうに書いてきたが、準備に費やせる時間も捻出できる量は限られている。
インタビュー時間もこの日2時間越えで付き合ってくれたが、
人生を書かせてもらうには十分とはいえない。
こんな制約というか歯がゆさがつねにつきもので、
そのせいにすればカンタンにどこにでも逃げられる仕事ですよ、俺たちの仕事は。
だからね、少しでも読者のみなさんに突き刺さるものがつくれたらと思って
もがいていなければ、バチがあたるよね。
なにより自分自身が気持ちよくない。

演技について、役者という生き方について実に真剣に応えてくれた。
そしてインタビューでもっとも盛り上がりを見せたのは、
健康診断にいかない酒好きというところかな(笑)。
「俺もあんなもの行きません」と、大いに盛り上がった現場だったのだ。
眼にすごく力があって、また機会があったらその秘密をえぐれるようなインタビューがしたいなあ。
それと、酒を酌み交わしたらきっと楽しいのだろうなと。
いつかチャンスがあればじっくりと語り合いたいものだ。

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