大編集後記その七。伊武雅刀さんと我々の攻防。

最新号を手に入れていただけたか? 今回つまんねえやと、書店に置き去りにした方もいるかもしれない。持ち帰ってくれた方々は、今頃グラス片手に楽しんでいることでしょう。厳しい意見も含めて、感想はお気軽に、そしてぜひ聞かせてほしい。

どんな動きになるのか我々にはさっぱりわからん。ただ、これまでの販売結果は把握できている。こんな企画が受けるとか、この方向性はダメなんだとの傾向はだいぶわかってきた。とはいえ、まだまだ攻撃的な『昭和40年男』でありたく、その姿勢は今号の表紙からも感じていただけるだろうか。そもそもは頭にポッと浮かんだイメージであるが、カタチにするのはカンタンなものでない。どんな仕事もそうだが、イメージやアイデアだけなら猿でも出せる。それをカタチにしていき、イメージ以上のものに仕上げていくことが大変なのは、仕事経験豊富なタメ年諸氏なら頷くところだろう。

デザイナーにイメージを伝え、大まかなラフを組み立ててもらい、それをカメラマンに渡してイメージをつかんでいただき現場へ臨んだ。取材のために伊武さんからもらえた時間は1時間と少々で、表紙の撮影に加えて、買っていただけたならわかるだろう最新号の16ページにドーンと掲載されたメインカットを撮ってもらい、さらにインタビューもする。緊張感が漂う極々短い時間に感じた。シャッター音が部屋に響くたびに、被写体となった伊武さんは表情に微妙な変化をもたらしてくれる。プロの仕事をプロのカメラマンが封じ込めていく。そこからボツカットを抜いた膨大な量の作品が後日届けられた。

僕はそこからたった1枚を選ばなければならない。上がりの熱を受け止めながら取捨選択するのは、せっかく芽吹いたのを剪定していくかの残酷ささえ感じる。しかも写真としての仕上がりだけでなく、表紙としていい写真かが基準なのだから、ますます残酷な自分に思えてくる。あえて自分に意地悪な言い方をすれば、すばらしい作品の数々から商業プロダクトととして適正か否かを判断する。僕は真剣に、息を止めるようにして1枚1枚を吟味しながら、やっとのことで約20枚に絞り込み、それをさらに吟味して10以上にも渡る表紙をデザイナーに組み立ててもらい、最終的に6枚のプリントを眺めながら決めた。はたして伊武さんにとって、またカメラマンにとってこれがベストショットだったかというと必ずしもそうではないかもしれないが、僕にとってはこの1点なんだと満足している。

なんて話を聞いてしまった皆さんは、今一度グラス片手に表紙をじっくり見ていただきたい。たくさんの時間が注ぎ込まれた攻防の結晶だから。

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