新たなゲーム “デザイアロワイヤル” で熱いバトル! 仮面ライダー 冬の祭り。

柴﨑貴行

劇場版『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』が12月23日に公開される。今回は『仮面ライダーギーツ』と『仮面ライダーリバイス』の競演だ。昭和50年男世代、そしてその子供たち世代にも大人気の仮面ライダー映画について、新作を監督する柴﨑貴行氏が語った。
 

平成仮面ライダーはいろいろちょっとずつ挑戦する
というのが続いてきているんです

 
1999年から特撮ドラマの現場で働くようになった柴﨑貴行氏は、2000年の『仮面ライダークウガ』(※1) から早くも平成仮面ライダーシリーズのスタッフとなり、その後スーパー戦隊シリーズ作品も監督するなど、ずっと特撮畑を歩み続けて現在に至っている。さぞかし、子供の頃から特撮が大好きだったのではないかと思うのだが…。

「小さい頃は、家に『仮面ライダースーパー1』(※2) のレコードはありました。『仮面ライダーBLACK』(※3) も観ていたと思うんですけどあまり記憶にないんです。特撮全般に広げると、スーパー戦隊シリーズは『太陽戦隊サンバルカン』(※4) とか『大戦隊ゴーグルファイブ』(※5) 、あとは『宇宙刑事ギャバン』(※6) とかの宇宙刑事シリーズは観ていた記憶がありますけど、子供の頃は特に特撮が好きだということではなく、世間一般的な子供が通ってきた道として、テレビで観ていた感じですかね」

とは言え、幼少期の男の子の王道として、遊園地などで開催される特撮系のイベントにも家族と一緒に足を運んだことはあった。

「僕、後楽園ゆうえんちの子供ぬり絵大会で、『太陽戦隊サンバルカン』のキャラを黒で塗ったんですよ。その頃って黒のメンバーってまだいなくて、それが (運営側で) 問題になったらしいんです。それで、後楽園に貼り出されるはずの塗り絵を家族と見に行ったら、僕のだけなくて、『どういうことだ?』ってなって。主催者の方から『すいません、黒はいないんです』というようなことを言われて、『いないといったって、子供の塗ったものでしょう?』とひと悶着あって (笑) 。それでお詫びとしてバギーのオモチャをもらいました。そしたら次作の『大戦隊ゴーグルファイブ』で初めてブラックが出てきたんですよね」

少年時代から独創的というか、特撮番組のトレンドを予見するセンスをもち合わせていた柴﨑氏だが、後にライフワークとなる『仮面ライダー』に興味をもったのは、大人になってからだ。

「2000年に『仮面ライダークウガ』のスタッフで入って、初めて “仮面ライダーというのはこういうものか” と深く知った感じです。だから過去の仮面ライダーが出てきて活躍する回なんかは、『この仮面ライダーが好きだからもっと活躍させちゃおう』っていうような偏りがないので、それは逆によかった。では『好きな仮面ライダーは?』と訊かれると、なかなか難しい。自分が関わったものはフラットに見るタイプなので…。まあ『仮面ライダー龍騎』(※7) とか『仮面ライダー555 (ファイズ) 』(※8) とかは、自分がこの世界に入って、ようやくいろいろわかってきた頃の作品かな。『仮面ライダークウガ』や『仮面ライダーアギト』(※9) は右も左もわからず無我夢中でやってましたから。それが『仮面ライダー龍騎』や『仮面ライダー555』のあたりでようやく現場の役に立っているというか、仮面ライダーをちゃんと作っている側になってきたというか、そういう意味では思い入れは強いかもしれません」
 

仮面ライダーシリーズ最近2作の魅力とは

そんな柴﨑氏は、近年の仮面ライダー作品には必ずレギュラー監督として参加するほど、シリーズになくてはならない存在になっている。2021年の『仮面ライダーリバイス』でも演出を手がけたが、これは “『仮面ライダー』史上初のホームドラマ” というコンセプトが話題を呼んだ。

「『仮面ライダーは家族向けのコンテンツ』というわりには家族の場面がほとんど出てこないよなぁ、と思っていたんです。根本的に昭和仮面ライダーには、家族を残虐に殺されて復讐に立ち上がるという話もありましたから、それを踏襲しているわけではないんだけど、なんとなく平成になっても孤高のヒーローというイメージがありましたよね。そもそも最初の仮面ライダー自体が悪の組織から抜けた人の話なので、いまだに話を作る時は悪の方から作っていって、どういう悪のテクノロジーで変身するのかというのを考えていくと。そういうこともあってなかなか家族が出てこなかったんです。それで『仮面ライダーセイバー』(※10) の時も、バスターに子供がいるっていうことも含めて、『家族ってどうしているんだろう?』とか『なんで家族が出てこないんだろう』ということを言っていて、それで『仮面ライダーリバイス』の企画の話をもらった時に、家族を守る仮面ライダーということで、ぜひやりたいということになりました。大体ハリウッドの大作映画も最終的なテーマは家族だったりするし、そういう意味ではそのテーマで1年間しっかりやれたというのはよかったかなというのはありますね」

そして、現在放送中の『仮面ライダーギーツ』では、一転して仮面ライダーたちが参加する “デスゲーム” がテーマとなった。昨年は韓国で制作されたデスゲームドラマ『イカゲーム』が世界的に大ヒットとなったが、柴﨑監督はこのテーマをどのように料理するつもりなのか。

「僕もファミコン世代で、小学生の頃はゲームで育ちましたし、今の子供たちもたいてい学校ではゲームかマンガの話題が多いですから、そういう意味でのゲーム性っていうのも技術のおもしろさのひとつ。さらに、今回からアクション監督も新しく変わり、ディスカッションをしながらいろいろ挑戦的なアクションもやってくれているので、そういう面も『仮面ライダーギーツ』のおもしろさのひとつかなという気はしています。最初に聞いていた企画の段階ではもっとシリアスな感じにしたいというのがあったんですけど、日曜の朝に観る番組ですから、あんまり人がバタバタ死んでいってもっていうのはあるんで (笑) 。『仮面ライダーギーツ』の世界観としては仮面ライダーたちが世界を救うためにゲームを繰り広げているということですから。とは言え、そういうのはありつつも、敗者は消されちゃうとか、見ようによってはショッキングなところはありますけど」

『仮面ライダーギーツ』を観ていると、平成~令和の仮面ライダー作品は、アクションもCGもド派手に進化していることがあらためてわかる。その裏には、スタッフたちのたゆまない努力と研究心があった。

「もちろんCGチームは独自にどんどん技術が向上しているということもありますし、『仮面ライダーギーツ』に関してはアクション監督が 藤田 慧 (さとし) くん (※11) という新しい人になったので、本人もすごく意欲的に挑戦したいとか、こういうカットをやってみたいというアイデアを出してくれるし、それでこちらもじゃあやってみようと。普段は同じ場所で戦うという構成が多いんですけど、今回の劇場版は後半のブロックに関してはどんどん場所を変えて追いかけっこしながら戦うみたいなことをやりたいってお願いしていて。そこに関しては『仮面ライダーリバイス』の1、2話でやりたかったんだけど、そこはドラマ上なかなかそうならなかったので。あとは走るクルマの上で戦わせるためにキャリアカーの上でやったりとか。そういうところはちょっと挑戦的というかね、平成ライダーはいろんなことをちょっとずつ挑戦するというのが続いてきているんです」

仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル

『仮面ライダーギーツ』(’22〜)

「令和仮面ライダー」第4弾。舞台となるのは謎の敵勢力「ジャマト」の脅威を退けるために開催されるデスゲーム “デザイアグランプリ” 。参加者たちは仮面ライダーに変身し、理想の世界を叶える権利を得るために勝ち残りを目指す。同じくバトルロイヤル要素があった『仮面ライダー龍騎』や『仮面ライダー鎧武/ガイム』に通ずるコンセプトをもち、“多人数ライダー” の集大成的作品とも言える。

『仮面ライダーリバイス』(’21〜22)

「令和仮面ライダー」第3弾にして、『仮面ライダー』生誕50周年記念作品。「悪魔と契約する仮面ライダー」をコンセプトに、人間と悪魔がタッグを組んで悪魔を倒す、悪魔をもって悪魔を制するという異色の仮面ライダー。新型コロナウイルス流行のなか、家族と過ごす時間が増えた人、また家族と容易に会えなくなった人たちに、家族を大切にしてほしいというメッセージが込められている。

普通は接触しないはずのキャラクター同士の
化学反応を楽しんでほしい

 
劇場版は歴代3作の仮面ライダーが競演!

劇場版『仮面ライダー』では、歴代の仮面ライダーの競演が毎回のテーマになっている。今回も “ホームドラマ” の『仮面ライダーリバイス』と “デスゲーム” の『仮面ライダーギーツ』が同じ物語のなかに登場するのだが、このコラボレーションを成立させるのが、作品成功のカギとなるようだ。

仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル
仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル
▲“ホームドラマ” の『仮面ライダーリバイス』と “デスゲーム” の『仮面ライダーギーツ』。水と油の世界観の2つの仮面ライダーに、さらに『仮面ライダー龍騎』までが参戦。高度なCGと激しいアクションを駆使したバトルロワイヤルが展開する

 
「『仮面ライダー』シリーズって根底の世界観が毎年全部違うので、それを調和するというか。お互いに都合をつけて作っていない設定のものを合わせないといけないので、そこがいちばん難しいところですね。映画の構成は年によって違うんです。オムニバスみたいにパートが分かれている年と、最初から合体している年と、その前後の世界観というか、どのくらいずれているかにもよったりするんだけど、そこがやっぱり世界観を合わせるというかね、調子を合わせるのが結構難しい。その代わり、本来は会話をしない、交わらないはずのキャラクター同士が交ざって会話をするというのがおもしろいところでもあるんで、誰と誰に話をさせるか、くっつけるかというのは、台本を作る時から考えています。たとえば『仮面ライダーリバイス』の場合、バイスは誰とペアにしたらおもしろくなるかな、とか」

さらに今回の劇場版では、今年放送20周年を迎えた『仮面ライダー龍騎』の仮面ライダーたちがゲスト出演することが決まった。若手スタッフ時代に関わった作品のキャラクターたちが自分の監督作品に登場することは、柴﨑氏にとっても感慨ひとしおのものがあるはずだ。

「僕は『仮面ライダー龍騎』で初めてセカンド助監督に昇格して、現場をまわしていくとか、そういうことも含めて、ようやく『仮面ライダー』のスタッフの一員となったと実感できた作品なので、それをまた監督できるというのはうれしいですね。また、『仮面ライダー龍騎』のメンバーはみんな仲がいいし、信頼のおけるキャストが多いので。監督って結構孤独なので、安心できる要素というか、自分の知っている要素が欲しいんです。新しいライダーよりは知っているライダーたちが出る方が、監督としてはすごく助かります」

『仮面ライダー龍騎』に出演していた俳優たちも、この20年の間に数々の映画やテレビドラマで経験を積み、今やベテラン俳優の地位を築いている。

「みんな巣立っていくというか、最終回でみんな散り散りになっていく時に、僕らスタッフはその後もこの場所を守り続けるわけだけど。だからいつでもみんなが帰ってこられるようにがんばるので、みんなも外でがんばってほしいというのはよく言うんです。それが20年経ってまたこういう風にお仕事できるというのは、僕らの願いが叶っているひとつの形だし、うれしいことですね」
 

家族を結びつけるのが『仮面ライダー』

言葉の端々に “仮面ライダー愛” を感じさせる柴﨑監督。そんな彼が、『仮面ライダー』シリーズを演出する際に、心がけていることはなんだろうか。

柴﨑貴行

「根本的に子供番組であるということを大前提として置いているので、子供たちにどう伝えるか、メッセージもそうだしわかりやすいっていうことに関してはわりと意識しています。あとは『家族で一緒に観るもの』という考えですよね。家族で映画館に行くっていう行動のきっかけになるもの。それを基に親子が会話したり、仮面ライダーのイベントに親子で行ったりするきっかけである媒体、それが『仮面ライダー』のドラマや映画であると。多分そこに最もこだわってやっていますね。そういう意味ではとてもやりがいがあります。ただ単に自分が作った映画がおもしろいかどうかだけじゃなくて、そういう家族を結びつけるものを作り続けることに、ここで監督をする意味があると思ってやっているところはあります」
 

※1 … 2000年1月〜’01年1月に放送。キャッチコピーは「A New Hero. A New Legend.」。
※2 … シリーズ7作目として1980年10月〜’81年9月に放送された。
※3 … 1987年10月〜’88年10月に放送された。シリーズ8作目。
※4 …「スーパー戦隊シリーズ」第5作。1981年2月〜’82年1月に放送された。
※5 …「スーパー戦隊シリーズ」第6作。1982年2月〜’83年1月に放送された。
※6 …「宇宙刑事シリーズ」三部作の第一弾として1982年3月〜’83年2月に放送された。
※7 …「平成仮面ライダーシリーズ」第3作。2002年2月〜’03年1月に放送。
    キャッチコピーは「戦わなければ生き残れない!」。
※8 … 平成仮面ライダーシリーズ」第4作。2003年1月〜’04年1月に放送。
    キャッチコピーは「疾走する本能」。
※9 …『仮面ライダーアギト』は仮面ライダー30周年記念であり、「平成仮面ライダーシリーズ」第2作目。
    2001年1月〜02年1月に放送。キャッチコピーは「目覚めろ、その魂」。
※10…「令和仮面ライダーシリーズ」第2作。2020年9月〜’21年8月に放送。
    キャッチコピーは「文豪にして剣豪!!」。
※11… 俳優やスーツアクターとして『仮面ライダー』シリーズに出演しながら、アクションクルーも務める。
 

取材・文: 山本俊輔  撮影: 石塚康之

山本俊輔 1975年生まれの真正・昭和50年男。ライターとして本誌の他、『キネマ旬報』『映画秘宝』『昭和39年の俺たち』などに寄稿。ノンフィクション共著『キャメラを抱いて走れ! 撮影監督 仙元誠三』が話題に。小説家・映画監督としても活動中。

「ギーツ/リバイス」製作委員会 ©石原プロ・テレビ朝日・ADK EM・東映


PROFILE

柴﨑貴行/しばさきたかゆき

昭和53年、千葉県生まれ。2000年に『仮面ライダー』シリーズ『仮面ライダークウガ』の助監督を務めて以後、『仮面ライダーゴースト』までの平成仮面ライダーシリーズに参加している。


最新INFORMATION

映画『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』は、仮面ライダーリバイスの “最後の物語” として始まる第1部、そしてギーツ×リバイス×龍騎の共演による “最悪のゲーム” へと突入する、シームレス2部作で構成される。2022年 12月23日 (金) 公開。

映画『仮面ライダーギーツ×リバイス MOVIEバトルロワイヤル』公式サイト
 

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