【懐かしの名盤】ザ・バンド『Music From Big Pink/ミュージック・フロム・ビック・ピンク』(12/13)

不定期連載企画、懐かしの名盤ジャンジャカジャーンのシリーズ第9弾は、ザ・バンドでお送りしている。いやはや、長い話になっているのは思い入れの大きさで、なにとぞおつき合いください。

僕とザ・バンドの関係にちょっくら話を戻そう。17歳のときに入ったバイト先の先輩方に強烈なレコメンドを受けてハマった。音楽好きな昭和40年男がよくやる行動パターンである、後追いでアルバムを揃えている最中に、ビックニュースが飛び込んできた。18歳の夏だった。ちょうど約1年前の『ラスト・ワルツ』をテレビで放送するなんてのと比較にならない大騒ぎである。なんとーっ、ザ・バンドが再結成した。今でこそ誰も彼もが再結成してがっぽり儲けるのは常だが、当時はまだ復活劇なんて稀だった。しかも驚愕のニュースは、初来日公演をぶちかますとのおまけ付きである。この情報に、バイト先のジャンキーたちは皆チケットを買い求めたのだった。

期待に胸を膨らませながら公演を待つ日々だったが、喜んでいたのは束の間で、ツアーにロビーが参加しないとの情報が入った。バイト先のザ・バンドジャンキーたちとともに、僕はガックリと肩を落とした。あの特徴のある変態的なギターがあるとないとで、チケットの価値がどれほど変わることか。おそらくロビー抜きでもチケットは買っただろう。だが買ってから来ないと知るのはどれほど心の傷が大きいか。僕はプロモーターに大人のズルさを感じ、音楽業界不信に陥った(笑)。

ザ・バンド再結成公演はロビー抜きの残念なカタチになったが、ザ・バンドジャンキーの先輩と一緒に渋谷公会堂に出かけた(彼は東京公演のすべてのチケットを買っていた)。満員で埋まった客席はロビー抜きを残念がっているものの、伝説のバンドの初来日に興奮状態でそれは僕とて同じこと。『ラスト・ワルツ』で何度も何度も繰り返し見た彼らを生で見られることに大きな喜びを感じていた。『ラグ・ママ・ラグ』で始まったライブはそれはすばらしく、ギターソロになるとちょっと物足りなくてコケるが、十分に楽しめたライブだった。目撃した先輩たちも皆大満足で、音楽業界不信をぬぐい去ったのだった。

その好印象のままにザ・バンドを愛し続けた。87年の2度目の来日はスケジュールが合わず逃したが、94年のときは新宿厚生年金会館に出かけた。2階席最前列に恵まれたが、リックのお腹が凄く出っ張っていて、そこにベースが乗っかっているカッコ悪さにまずやられてしまった。名曲『同じことさ』の歌声は相変わらずすばらしかったが、その姿を見てしまうと往年の若々しい細身のリックと別人に感じてしまい曲にのめり込めない。それとリチャードがいないことはやはり大きくて、猛烈なファンの僕にはその他にも諸々辛いことの方が大きかった公演で、帰り道で次は足を運ばないだろうと思った。僕の中にいるザ・バンドが活動休止に入ったのだ。ずっとファンだけど、レコードで振り返る存在になった。もっともこれが最後の来日となってしまったのだが。(つづく)

          

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