昭和な立ち食いそば屋にて我想ふ。

おっさんの聖地・新橋で、ずっと以前から気になっていた立ち食いそば屋にやっと入れた。どこもニューじゃないのにニュー新橋ビルにある、丹波屋という店だ。入ると背の小さなおばちゃんが、割烹着姿で迎え入れてくれた。その姿だけでもう十分に満足してしまう、昭和のおっさんである。

 

立ち食い店で春菊天を見つけると、ほぼ必ずと言っていいほどオーダーする。おばちゃんに告げると、ものすごく丁寧に仕上げてくれた。ご覧のとおりの見事な一杯410円也で、これぞキング・オブ・立ち食いってなたたずまいは、強く昭和を感じさせてくれる。おばちゃんに「いただきます」と伝え、まずはつゆからいただく。うんうん、やはり僕の目に狂いはなかった。甘めのつゆはやはりたっぷりの昭和を連れてきて、天ぷらのつゆへのほぐれ具合というか柔らかさというか、ばっちりでよい。

 

午後3時過ぎで僕一人だったところに、昭和を愛していそうな (どんな!?) おっさんが入ってきた。さすがわかってらっしゃる、彼も春菊天そばをオーダーした。いなりず寿司をひとつ追加オーダーで、これができるおっさんがうらやましい。お正月に向けてダイエットを決め込んでいるため、ものすごくうまそうないなりを僕は我慢したのだ。そして、さらに続いて40代くらいだろうか元気なお姉さんが入ってきた。すると彼女はかき揚げそばとミニカレーのセットをオーダーするじゃないか。これまたカレーがうまそうであり、昭和であり、そしてやはりうらやましくてまぶしく見えた。ふーっ。

 

チェーン店でない立ち食いそば屋が激減してしまった。そんな中で、この新橋の丹波屋さんはどっこいがんばっていて、全てが昭和で統一されている。が、唯一違った点があった。僕の次に入ってきたおっさんはPayPayで会計するじゃないか。割烹着のおばちゃんも対応するじゃないか。これに強い違和感を感じてしまう、僕こそ正真正銘の昭和のダメ親父である。美味しさの裏側で、ダイエッターであることとデジタル難民であることの悲哀を感じながら、背中を丸めて店を出たのさっ。
 

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