春は別れの季節。

本づくり以外にも仕事は多岐に渡る。その中で大きなウエイトを占めているのが、バイク関連企業の販促やブランディングのお手伝いで、もうかれこれ20年近くになる仕事だ。担当者とは激論を交わすこともしばしば、もつれるように現場をこなす。いい内容でフィニッシュできれば互いの健闘を讃え合いながら、うまい酒を酌み交わす。そんな風につき合っていただく方々と、春は寂しい別れとなることが多い。新年度を迎え、移動の季節なのだから仕方ない。

今年は2人の方と別れがあった。両者ともに大変世話になり、勉強させていただき、僕も持てる情熱を注ぎこんだつもりだ。1人は突然の異動発令で、本人も僕もまったくそんなことになることを予想していなかった。今年度の大まかなビジョンは構築できて、導入実施を待つばかりだった。目玉企画も用意していたし、実施後には企画のさらにる熟成を目指して未来へと舵を切るはずだった。互いに燃えていたのに、シーズンインを目前に取り上げられたような気分だ。こうしたことはきっと皆さんもよく経験なさっているだろう。こうなった以上、次の担当者とこれまで以上にいいものを構築していくと踏ん張るしかない。前任者ともこれから仕事のチャンスはあることだし。

だがもう1人は寂しい別れである。定年なのだ。18年の付き合いだった。部署を変わるたびに声をかけていただき、仕事をこなした。まったく絡めない部署のときには、互いの時間を使い議論して過ごした。海外を学ぶことに一歩を踏み出せなかった僕の背中を押してくれ、中国やイタリアを経験することになった。僕らのような外部が考えるのと、メーカー内からの視点で考えるブランディングの相違点を、いつも噛み砕いてレクチャーしてくれた、取引先というより仕事上の大先輩である。

事件を起こしたことがある。彼と一緒になって、当時の彼の同僚と上司にめいっぱい噛み付いたことがあった。きっと大迷惑だったことだろう。だが付き合いは変わることなく、いつ訪ねても歓迎してくれた方だった。

引退の酒宴を催したとき、1枚のシートを僕に手渡して「な〜に言ってるの、引退なんかしないよ。起業するからさあ、よろしくね」。うーむ、さすがにタフな先輩である。第2の人生に幸あれ。

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