マイ・ファニー・バレンタイン。

ルンルンルン、今日はバレンタインだね…、な〜んて浮かれている同世代男がいたらあんたは偉いっ。もうすっかり過去の記憶の中に閉じ込められたイベントではあるまいか。

 

ガキの頃はそれこそワクワクした年もあったが、モテ男でないにとっては苦痛な日というイメージの方が強く、クリスマスと並び恋人たちが輝く日はやさぐれていた。だが、悪くないともいつも思っていた。恋人同士をピカピカさせるようなカルチャーは、俺たちに多くのことを学ばせてくれたり、背伸びをさせてくれたもの。

 

で、バレンタインといえばこの一枚だ。僕が敬愛する女性シンガーのリッキー・リー・ジョーンズのサードアルバムで、発売当時は10インチレコードで出している。昔あったひとまわり小さなサイズで、ちょいと話は脱線ゲームになるが、エアロスミス初期の傑作『トーイズ・イン・ジ・アティック (闇夜のヘヴィ・ロック) 』のA面ラストにこのタイトルの曲が収録されている。卑猥な歌詞のブルースブギナンバーで、こういう曲をハードロック好きだった中坊の頃の僕に押し込んでくれたおかげで、後にブルースジャンキーになれたのだから感謝である。

 

戻す。リッキーのこのアルバムである。ワーナーがレーベルの威信をかけて送り込んだファーストアルバム『浪漫』と、A面1曲目に収録されシングルカットした「恋するチャック」は大ヒットした。これまたハードロック小僧だったのに、『ダイヤトーン・ポップス・ベストテン』から流れてきたこの曲をえらく気に入ったのは中2のことだった。のちにほとんどのアルバムを所有するに至ったわけだが、『マイ・ファニー・バレンタイン』はそんな彼女の3作目だった。普通を嫌う彼女がさまざまな知恵を入れ込ませた中の一つが、この10インチレコードという選択だった。12インチにしないことで、ファースト・セカンドと大ヒットした傑作から路線を外そうとするかのような、彼女とプロデューサーのレニー・ワロンカーのひねくれたサードチャレンジがこのカバー曲中心で、ライブ音源も収録した傑作である。なんとも痛快だ。今宵、バレンタインと無縁の男が焼酎で過ごすのにぴったりである。ちなみにタイトルチューンはジャズスタンダードで1937年にリリースされた曲だ。戦前だよ、おったまげるなあ。

 

気づいたのは、エアロが名曲「ビッグ・テン・インチ・レコード」を収録したのがサードアルバムということ。リリースは1975年だったから、若かりしリッキーがこの卑猥ソングに傾倒したかも知れぬ。そして自分自身はサードをテンインチで勝負して引っ掛けた。うーむ、これはないかな (笑) 。
 

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