表紙で振り返る令和3年 ~その参。

新緑の季節ながら、まだまだ世の中にいい風は吹いていなかった。そして東京オリンピックの開催をめぐって是々非々が巻き起こり、あろうことか反対派は選手を批判の対象のようにまで扱った。今年にとって一番悲しいことをあげろと言われたら、この日本とは思えない心の分断が起こってしまい、言葉の暴力となって世の中にばらまかれたことだとこたえる。このつぶやきやイベントで話す機会を得れば、ことごとく僕は持論を発した。意見を発するのはいいが、その矛先を見誤ることはあってはならない。

 

さてさて、この号 (vol.67) の特集タイトルはご覧のとおり『俺たちを興奮させたでっかい夢  昭和イベント大全』とした。東京オリンピックの開催を支持する僕らしい特集を、ここしかないというタイミングで打ち込んだのだ。ちなみに、前年の5月発売号 (vol.61) でも東京オリンピックにひっかけて『俺たちが愛した東京』とタイトルした特集を打ちこんだ。東京2020は、2年続けて僕にネタを提供してくれたことになる。ありがたや。

 

今だから話そう、この表紙にはすったもんだがあった。そもそもは1964年の10月10日に、空に描かれた五輪で作ったのだ。バッチリ決まって話題になるぞとワクワクしていた。そしてこれは許諾がいるだろうと委員会に投げていたのだが、最終的な判断はまさかの「ダメーっ」になってしまったのだ。しかもすでに入稿していて、色校正と呼ばれる試し刷りが出ている段階だった。あーでもないこーでもないと図案を作り上げて、なかなかよく出来たと “投げ入れ” と呼ばれる、試し刷りなしの表紙を生まれて初めて作ったのだった。

 

前述した開催反対派に対して、僕の魂を打ち込めたのさ。めでたしめでたしである。この特集冒頭ページに、社会の騒ぎを無視するように、こんなにも能天気なメッセージを発したのだった。

 

ルンルンランラン、イベントだっ。出かける時は心躍り、帰り道では感動を胸に詰め込んで笑顔になれる。俺たちはイベントが大好きだ。その起点こそが「東京オリンピック」だと断言する。昭和20年に焼け野原となり、どん底を経験した親世代たちのがむしゃらながんばりが奇跡的な復興をもたらした。そのシンボルとして東京オリンピックは燦然と光り輝き、昭和40年男が「おぎゃっ」と産声をあげる前年に日本中がこのスポーツの祭典に酔いしれた。そして、大きな感動を胸に刻み込んだ大人たちは次々に大小のイベントをクリエイトしていくことになる。思い起こせば、ガキの頃より夢あふれるイベントに囲まれて成長した俺たちはなんと幸せ者よ。つまり、ありがたや「東京オリンピック」の大成功ということになる!!
 
だがしかし、誰もがどれもこれもを体験できたわけじゃない。むしろその恩恵にあずかった者を羨望の眼差しで眺め、諦めた記憶の方が大多数ではあるまいか。ちょっぴり悔しかったりもしたはずだ。そこで本特集は、昭和イベントの証言者たちの声を中心に再現することを主眼として構成した。当時行けなくて悔しい思いをした皆さんを、時を経て今、あのビッグイベントへとご招待しよう。
 

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