キッスで入門 ~大編集後記。

 

特集 (vol.70) の冒頭を飾る扉ページは、副編竹部のアイデアでロゴマークで作ることにした。うんうん、さすがわかってらっしゃる。デザイナーにはいい意味でカッコよすぎずに作ってくれとお願いしたところ、うんうんわかってらっしゃる。イエローの稲妻と星が発注どおりのちょいダサに向かったアクセントだ。音楽雑誌や、ハイソ男性誌のようなかっこいいのにしたい気持ちはグッと抑えて、『昭和40年男』に横たわっている独特の世界観を付与しているつもりだ。それはね、言葉にするのは内緒 (笑) 。感じ取ってちょうだい。そして僕は、リードと呼ばれる特集の導入文章の作成に取り掛かる。今回の書き出しはまさしく実体験でもある。

 

~ ある日のこと。ヤツは得意げな顔で教室にキッスの写真を持ち込んだ。兄貴の影響であることは間違いないのだが、ジュリーもドリフターズも霞むほどの黒船来襲だった。「ウチに来ればレコードで聴けるよ」との言葉に乗ったガキどもは、その放課後にメガトン級の爆弾を脳天に落とされたのだった。…と、俺たち世代の “ファーストハード体験” がキッスだったなんて声はよく聞く。

「もうガキとは呼ばせないぜ」と勘違いが始まった頃、キッス以外にもハードロック/ヘヴィメタルを引っ提げたミュージシャンが次々と現れた。俺たちは来襲する黒船たちに震えながら、怒涛の攻撃を受け続けたのだ。そしてやがて、さほど多くの時間を要さずして、俺たちは右手を硬い拳にして突き上げ叫んだ。「子供騙しのポップスなんかもうまっぴらゴメン。ディスコもテクノもうんざりだ。俺たちの魂にもっともっと火をつけてくれ」メラメラと燃えたあの日を取り戻す、ハードでヘヴィな大特集をお届けしよう!!

 

中学1年生の教室では、男子の多くが洋楽への背伸びがしたく、ロックなるものへと興味を抱いていた。同じ洋楽でも、女子はベイ・シティ・ローラーズのようなポップスにいく。この感覚こそが昨日つぶやいた、今回の特集は女子に親和性が薄いのではないかという懸念である。いや、ロック傾向の女子もいたが少数派であり、ましてや “ハード” がつくとなおハードルは上がる。逆に男子はハードを好む者が多かった。

 

冒頭に綴った男子はそのまんま兄貴の影響が大きく、NHKの『ヤング・ミュージック・ショー 』で放送されたキッスの武道館公演を目撃した。その際に脳天に雷が落ちたという、典型的な俺たち世代あるある男で、僕は9月の大編集後記でもこんなことを書いている。その頃の僕は「ジュリ~」に身悶えていた。この翌年に中学生になり、兄貴のいない僕にも教室で洋楽の情報が入ってくる。背伸びがしたかった僕は、教室外の情報源としたのが主に『ミュージック・ライフ』と『ダイヤトーン・ポップス・ベストテン』だった。ゆえに当初は、ハードロックよりもポップスに寄ったものが好きになったが、やがてギターを弾くようになると俄然リッチーやペイジとなる。これがリード文の「」の中の叫びであり、ハードなものこそがすごいんだという時期が約3年前後続くことになった。この頃より僕の左手の指先は硬いままだ。感謝、ハードロック!!

 

そんなギターキッズは同世代男子も多かろう。逆にハードなのはそれほど夢中になっていないよという諸氏も多く、そんな方々にも「ああそうだったのか」という作りになっているから安心して手に取ってくだされ。魂直撃の最新号で今週末をハードに盛り上げてくれっ!!
 

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