津軽海峡冬景色。

今さらながらの感はあるが、去年の大晦日の夜に歌の神を見た。紅白歌合戦で紅組のトリをつとめた石川さゆりの凄かったこと。僕はおそらく一生語り続けるだろう。

古いヤツだとお思いでしょうが(おおっ、懐かしい)、『紅白歌合戦』が大好きで、ここ数年我が家の大晦日はほぼチャンネルロック状態で過ごしている。紅白だからこそ期待する楽曲がいくつかある。和田アキ子さんの『あの鐘を鳴らすのはあなた』。北島三郎さんの『まつり』と『風雪ながれ旅』。そして、なんといっても石川さゆりさんの『天城越え』である。大晦日の朝、まず新聞で紅白の演奏曲でチェックするのは例年恒例の行動で、残念ながら和田さんのみ聴けるメニューだった。サブちゃんとさゆりさんが紅白トリ対決で、これらの曲をやってくれることが最もうれしい年越しなのだが、最近は双方のトリが演歌というのはほぼないのが寂しい。

あの日は夕方から『年忘れ日本の歌』なる番組を初めて見た。夕方5時から始まって、まるで紅白の前哨戦のようにスゴイ歌手が次々登場し、僕の演歌魂に早くもスイッチが入ってしまった。スタートから惜しみなくエースカードを切り続けるかのような展開はそれもそのはず、生放送だから紅白出場者たちはNHKに移動しなければならず、まさに前哨戦なのだ。ここでさゆりさんの『天城越え』とサブちゃんの『風雪ながれ旅』を聴けて、多数での合唱であったが『まつり』まで飛び出す大サービスぶりは涙もののうれしさで、紅白前にも関わらずつい酔いが深くなってしまった。あまり呑みすぎて、紅白をしっかり試聴できないといかんと、ややペース調整をするほどだった。

去年の紅白は当然ながら震災復興が大きなテーマであり、なんらかの想いを持ち、また意味のある楽曲をみなさん懸命に披露していた。その中にあって、抜けて凄かったのは天童よしみさんだ。失礼ながら、こんなに歌のうまい人だったのかと再確認させられ、酔いが冷めるように引っ張っていかれた。天童さんには昭和40年男を代表してリクエストしたい。今年の紅白は『いなかっぺ大将』の全曲メドレレーを披露してください(真剣)。

続けてサブちゃんの登場で、抜群のリズムを叩き付けるアタックの強さと、それでいて絹のようななめらかな歌唱は相変わらず健在で、日本の宝っぷりを見せつけられた。さあ、ボルテージ最高潮のところで大トリ…、といいたいところだが、その後にたしか白組が続いていたようだ。我が家ではここを年越し蕎麦の準備にあてた(笑)。紅組のトリで登場した石川さゆりさんの、全神経を歌に注ぎ込んだ凄みガンガンの歌唱に、息子がいる前で情けないが号泣だった。人間の集中力とはここまで高められるのか。全身全霊を込めてと表現するのにふさわしいエネルギーが画面から激しく、そしてやさしく胸に突き刺さってくる。僕がこれまで見た中で最高のさゆりさんだった。

編集部の新年会でも、ほぼ皆のコンセンサスになり、さすが『昭和40年男』をつくっている面々だけのことはある(笑)。また、タメ年中心のいくつかの酒席でもこの話を持ち出してみたが、頷いてくれる方が実に多い。みんな紅白好きで演歌好きなんだな。少々古い話を引っ張り出しましたが、一昨日の酒席でも熱く語ってしまったもので、あしからず。

この記事が気に入ったら
いいね ! しよう

Twitter で