タメ年動物カメラマン、福田さんの新刊。

今年の夏に発売となった、第8号の巻頭インタビューを飾ってくれた動物写真家の福田幸広さんの写真集が発刊された。テーマは野生動物たちの子育てで、動物家族ものがたりとなっている。

彼のインタビュー時に強く感じたのは、自分の信じた世界を突き進んでいく強さと美しさだった。写真を撮ることによる見返りを求めていない。こうして言葉だけで表現すると、ただのきれいごとのように取られるかもしれないが、そんなわけでなく本当に強い信念のもと突き進んでいるのだ。取材当日は足を引きずっていて、これはオオサンショウウオを狙って冬の川の中に1日何回も浸かりながらの長期撮影で、感覚が無くなってしまったとのこと。深刻に思える症状を、本人は「仕方ないですよ」とただ笑っていた。動物だけを撮り続けたいと願う男のモチベーションは「撮りたい動物さえいれば足を引きずってでも行きますけど、病気だから休んどこうかなってくらいの対象しかいなくなったらつまらないし、もたないと思います」と言った。

昨日のことだ。タメ年シンガーから「歌を手段にしたくない」という、すばらしい言葉を聞いた。次号で掲載予定のインタビュー現場でのことで、かつてヒット曲を出しスターダムにのし上がった男が、その後地獄を味わい紆余曲折の末自分自身の歌を取り戻したという、男の人生ストーリーだった。瞬間的に福田さんのことを思い出した僕だった。表現方法こそ異なるものの、ぶれずに自分の道を追い求める強い姿勢は2人の共通点である。「おい、お前はどうなんだ?」と自問自答していた。

この写真集には福田さんのやさしさがあふれている。随所に言葉も添えられていて、これがまた心に染み渡る。前書きには「もし、動物の言葉を聞くことができたなら、どんな会話をしているだろう?」から始まり、「動物の親子の声を聞いてみたい。〜中略〜そこに穏やかで心なごむ言葉が交わされているかもしれない。そう想いながら、私はいつもファインダーをのぞいています。」と、彼の気持ちがまっすぐに綴られていた。ページをめくると、動物親子たちがやわらかな表情でコミュニケーションしている姿が、数多く収められている。お子さんと一緒に、家族みんなでぜひ会話を楽しみながら眺めてほしい。おススメですよ。

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