クジラの立田揚げ。

つい先日のことだ。実に楽しい宴が開催された。僕と同様で火のないところに煙を立てることを生業にしている4人が集結して、『昭和40年男』について様々な議論がなされた。まあ、ただの呑み会といえばそこまでなのだが、やはり僕ら世代にはノミニケーションという言葉はありで、議論と笑いに包まれた席だった。

メニューをのぞき込んでいた、唯一50歳を突破している座長の男が言った。「クジラの立田揚げがありますね」と。全員が瞬間的に思い浮かべたのは給食である。そんな回想シーンを楽しんでいる3人に座長はさらに続けた。「この前、若い子と呑みに行ったら、クジラベーコン知らないんだよ」。クジラベーコンと立田揚げは昭和40年男にとってまったく異なるものであり、双方をクジラでくくるのに無理があると感じるほどの隔たりがあるのは、やはり給食の強烈な想い出が大きい。クジラベーコンは大人の味で、立田揚げは小学生の味なのである。

『浅草秘密基地』で徐々にわかってきたことだが、給食と一口に言っても、市区町村単位での食育の考え方や、学校で作るかセンターから届けられるかなど、地域や世代で大きな差異がある。一方で、どうやらクジラの立田揚げはかなり広い地域での定番だったようだということもわかった。僕の地域では、甘辛い味付けで臭みはほとんどなくて柔らかくて、単体ではとてもおいしかった。ただ問題は、食パンとの愛称が極端に悪いことだったな。マーガリンを塗った食パンで巻いて、クジラロールにしてほおばっていたっけ。

食卓が豊かになり、貴重なタンパク源であったクジラは食卓から遠のいた。日常の食材ではなくなってしまったが、一口ほおばると懐かしいあの日がよみがえるのは昭和40年男に共通していることだろう。どこぞの圧力団体に屈することなく、細々とでいいから未来に残していきたい食文化である。

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