【懐かしの名盤】ロッド・スチュワート『Every Picture Tells A Story』(3/6)

ブログ特別不定期連載記事『懐かしの名盤ジャンジャカジャーン』の3枚目をお送りしている。この連載は音楽と密接に生きてきた昭和40年男にとっての名盤を、僕の独断でセレクトしていこうというもので、今回選んだのはロッド・スチュワートの『エブリィ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー(Every Picture Tells A Story)』である。だが、そこに至るまでには長い月日と回り道を繰り返した。僕が初めて購入したロッドのアルバムは、なんとミーハーな『スーパースターはブロンドがお好き』だったのだ。

悩みに悩んでせっかく手に入れた『スーパースターはブロンドがお好き』は、初めて聴いたときの印象は悪くなかったものの、聴き込んでもあまりのめり込んでいかなかった。すでに知っていた『アイム・セクシー』は大好きだったし、ラストのバラード『うちひしがれて』はいまだ大好きな曲である。だが、よくわからかったのは大騒ぎのロックンロールナンバーだ。アルバムタイトルのままの邦題が付けられた『スーパースターはブロンドがお好き』は退屈で、ノリがいいカッコよさなんてのはまだわからなかったのである。このアルバムとの出会いでしばしロックンロールという敬称がついたアルバムを避けるようになった。だが決して嫌いなシンガーというワケではなく、いい声のアイドルという位置づけをしてしまったのだ。そう、沢田研二と同じなんだと。このときからしばし、僕はバンドものの方が好きで、ちょっと難しいサウンドの方が好みなのだろうと決めつけた。そんな気にさせたアルバムとなってしまったのだ、ああ若い。しばらくロッドは付かず離れずの距離感の存在で、僕はハードロックやプログレに突っ込んでいった。同時にソロよりバンドの方が優れているのだと、またまた若さゆえの誤解の時期を過ごすことになったのだ。先に手に入れたクイーンの2枚は聴けば聴くほどに、とくに『オペラ座の夜』は難解な曲が多かったため、聴き込んでいくと少年なりに発見があり、今考えればこじつけも多かったも知れないが、自分を納得させられるものがあった。

そんなロッドが再度急接近してきたのが、『スーパースターはブロンドがお好き』の約2年後にリリースされた『パンドラの匣(Foolish Behaviour)』だった。姉ちゃんのいる親友が、その姉ちゃん共々ロッドの信者で、興味を失いかけていた僕に強力プッシュしながら貸してくれたのだ。僕はカセットに落として何度か聴いた。前作よりもしまった感じに好感を持ったのと、やがて『パッション』や『自由への翼』が大好きになり、ド派手なノリノリナンバーもこのアルバムでの曲たちは好みだった。ちょっと見直した僕はベストアルバムを手に入れる。オリジナルアルバムを全部そろえるほどじゃないけれど、わりといいじゃないといった存在に昇格したのである。また『セイリング』がレコードで欲しかったというのもあった。ここら辺から『スーパースターはブロンドがお好き』で評価を下げたロッドが、ふたたび自分の中で浮上し、そしてこのベスト盤によって、今回僕がベストアルバムに選んだ『エブリィ・ピクチャー・テルズ・ア・ストーリー』に収録されている『マギー・メイ』と遭遇する。今も大好きな『ただのジョークさ』にも出会えた。こうしてドンドン株を上げるロッドが僕の中で決定的なものになる事件が、やがて日本武道館で起こる。(続く)

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