出会いと別れの繰り返し。

「今日で引退なんです」と、この2年と少しの間一緒に汗を流した女の子、木下さんが会うなり言った。カワサキのイベントで進行役を仰せつかった時は、KAZEギャルと呼ばれる女の子と一緒にステージに上がることがほとんどだ。その中でMCを担当する方とは戦友状態になる。集まった方に少しでも喜んでもらいたいという共通の気持ちがそうさせるのだ。その中でも相性や実力によって思い出深い方と、残酷ながらそうでない方もいて、今回引退する木下さんは20年になる僕のMC人生の中でもトップ3に入るとてもやりやすい人だった。冒頭のセリフを聞いた時は残念でならなかったが、明るい未来に向けての本人の選択なのだから仕方なしだ。

思い出深いのは一昨年の国内バイクレースの頂点となる『鈴鹿8時間耐久』でのステージだ。8耐復活3年目にしてつかんだ表彰台で、僕らは全力で集った皆さんを祝福し、互いに喜び、そしてバカ騒ぎを楽しんだ。その時の相棒が彼女で、言葉にできない連帯を感じながら完全燃焼することができたのだ。引退することになり、互いに思い出話となるとついついあの日の奇跡に話がいき「いつかあの日の同窓会がしたいな」「いいですね」とそんな言葉まで交わしたほどの大いなる1日だった。彼女だけでなく、あの日の僕を含めた5人、いやカワサキの担当者を含む6人に強烈な連帯があったのは、本気で喜んでもらおうとのテンションが高いところでシンクロしたからだ。それからというもの、木下さんとのステージは打ち合わせ一切なしでもバシッと決められて、気持ちの良い仕事を繰り返していた。ええいっ、女々しい。ついさっき仕方なしと言ったじゃないか(笑)。

仕事を通じて人と出会い別れていく。僕の仕事の雑誌作りもイベント運営も複数名で組み上げるものだから、出会いは多い方だと思う。そして、成功させるために心を合わせていくからまさに戦友状態になる。

彼女の引退をまるで祝うかのような花が、常連さんから届いた。奇しくも同イベントの20周年とカワサキの会員組織『KAZE』の30周年も重なった。この記念すべき日に引退とはかっこいいじゃないか。最後は女々しくなることなく引きずるような言葉も出さず、爽やか(ホントか?)に「お疲れっ」と見送った。うん、なんかかっこよかったぞ。おっさんはこうでなくちゃな。

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