目からウロコの店2つ。

豚しゃぶ先輩が酒席を催してくれご招待いただいた。広告関連の仕事柄か店探しが上手で、この日はうまい豚しゃぶを食わせてくれるという。数々のつまみで焼酎をガンガン呑る一同にメインの豚しゃぶが運ばれた。丁寧に細く切られた山盛りの野菜ときれいな豚の薄切り、そして鍋には昆布が放り込まれた湯が張ってある。ふむふむ、これをポン酢かゴマだれでいただくのだなと当然の想像をする。が、豚骨スープで食えというのだ。ほーっ、これはこれはといただくとサッパリとしていながらうま味たっぷりの豚骨スープが野菜とよく合ってうまい。辛口の豚骨スープもポットに用意してくれ、コチラもまことにうまい。そして〆は鍋にラーメンだ。「こりゃあうまいに決まってるよ」と、一同の腹は膨らんでいるはずなのだが箸が進む。50歳にしての初体験にすっかり満足したのだった。

談笑しながら食後のお茶をすすっている一同に僕より提案してみた。というのも、駅よりこの店に向かっている途中に「真空管アンプとアナログレコードのBAR」という文字が看板に踊る店を見つけたのだ。この酒席のメンバーは僕を含んで50代が3人に2つ下が1人という構成だ。このキャッチフレーズが気にならないはずがなく、一同目を輝かせて向かった。

思ったより大きなハコのバーはほぼ満席だった。男性が圧倒的に多く、平均年齢は僕くらいだろうか。1曲単位でリクエストが出来る。これに我々は大はしゃぎで次々にリクエストを入れると、手慣れた感じで棚からアルバムを引っ張り出す。2台のプレイヤーがアンプに繋がっていて、大忙しでセッティングを繰り返していた。

真空管アンプだったらジャズかもしれないと若干の疑いを持っていたが、かかるのは70年代80年代のポップスやロックばかりで楽しいったらありゃしない。メジャーな曲ながらなるほどというナンバーが続いた。こういう賑やかな店の夜にアバが響き渡ると小さな歓声が上がった。曲はもちろん『ダンシング・クイーン』だ。こうなるとこの小さな歓声をリクエストで狙い始める悪ノリの我々だが、残念ながら『ダンシング・クイーン』を超える曲は見つからなかった。

こうした楽しさこそ我々世代のものだ。音楽をむさぼるように聴きながら、もっともっと音楽のことを知りたかった若き日々。さらにいい音への憧れも強かった。双方がこの空間ではスパークする。そして大人になった我々は酒をたしなみながらこの時間を過ごせるのだ。ああ、大人っていいなとしみじみ噛み締めた夜だった。

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