胸さわぎの腰つき…、なんてな。

第6感というか、虫の知らせというか、なんか嫌な感じがして「ほらーっ!」っての、あるじゃない?
初めてそんな経験をしたのは高校生のときだったと思うけど、財布を落とした日のこと。
すごくいやなイメージがあったんだよね。そうしたら案の定、その日ですよ、どこかに落とした。
このときは現金被害はほとんどなく、まだカード社会じゃなかったからそっちの心配もまったくなし。
ただね、友人や女の子、その他諸々の連絡先をすべてを失ってしまったのは痛かった。
まっ、それでも必要な人たちとは繋がっていくものだから、結局このときそのまま切れてしまった
女の子たちとは縁がなかったと諦めたのさ(泣)。それ以来も、不思議なことに深刻なのから
笑っちゃうのまで、胸騒ぎが的中してしまう経験をした。

そしてつい最近、久しぶりにいやーな感じがしたのだ。主役は愛用のテレコ君である。
テレコといっても今やテープは回さない。デジタルレコーダーなのであ〜る。こいつがなんとも
信用ならない。とはいえ、これまでへまをしたことはないデジタルテレコ君なのだが、昭和の
人間にはどうも“回っていない”ことに心配を覚えてしまう。ずんぐりとしたボディのRECボタンを
グシャッと押し、回り出すのを確認して「では、よろしくお願いします」との儀式がよいのである。
今や軽〜いスイッチで、しかも回らない。平成の人間、いや、昭和50年以降の人間、いや、
日本でビジネスシーンにいる人間ならみんな大笑いするかもしれないが、ともかく僕はグシャ〜
クルクル世代なのじゃ(なんじゃそれ)。でも今時の編集長であるし、ロングインタビュー好きの
僕に取ってテープの片面が終わってポタンが起きる音ったら身の毛もよだつほど嫌な瞬間である。
“カシャ”である。それまでキレイに流れていた話は完全に分断され、僕は照れ笑いを浮かべながら
スミマセンなんていってテープを反転してグシャとやるのである。
一度冷えてしまった肩で投げ込む投手。13歳で出会い、ため息を覚えてしまった18歳の2人。
カチンコチンなってしまったピザパイ。そこからまた再び元に戻すのである。って、そんな大げさかと
言うとちょっと言い過ぎかな(笑)。冷たい空気が流れることだけは間違いないのである。

長くなったが、そんなできの悪いヤツでも愛していたテープレコーダー君と決別して早3年以上が経つ。
(って早じゃねえ) 慣れればやはり、格段に便利である。だがいまだに不安を感じるもので、横にiPhoneを
置く。それほど僕とニューテレコ君は、まだ仲良くなれていない。そんな仲だからだろう、山本昌さんの
取材に行くとき特有の胸騒ぎを感じた瞬間、僕はなんとなくニューテレコ君にいやなイメージを抱いたので
あった。無事に取材を終えて疲れ果てて(酔っぱらって?)家に戻った。あっ、そうだとiPhoneを確認すると
ぬぁんと録音されていないじゃないですか。あーっ、やっぱりとニューテレコ君を確認するとキチンと録音
されていた。ふーっ。このとき僕は、沖縄行きの朝に感じた胸騒ぎが杞憂であったのだと安堵した。

そして直後に行った旅取材にも持っていった。ちょっとした話が聞けるような方に会えたとき、
さっと記録用に持っていくことにしているから、上着のポケットに入れて出かけたのだ。
昌さんのインタビューデータをすぐにPCに移動していなかったから後の騒ぎになってしまったが、
沖縄から怒濤のごとく過ぎ去っていく日々のままに旅立ち、帰ってきたという次第だ。
そのまま怒濤の〆切ラッシュで、まだ愛するにまでいたっていないニューテレコ君とは
会っていない日々をそのままにしていたバカな俺だ。昨日の深夜、そろそろ昌さんの原稿に
かかろうと思ったところでないことに気が付いた。あるべきところにない。まだ安心していたのは、
旅の上着のポケットに入れっぱなしになっているのだろうということ。翌朝(つまり今朝)、家に
電話してみて確認したところ、ないと言う。
 「えーっ、あるってば」
 「ないっ」
 「じゃあ、リュックに入っているよ」
 「ないっ」
体中に汗が噴き出し、瞬間的に昌さんのインタビューの大事な部分をトレースする僕だった。
落ち着け、きっと何とかなる、きっと思い出せると深呼吸を繰り返し、少なくともスタッフにばれないように
平静を装う。心配をかけちゃいけないしね。

とまあ、こんなことをここで書いているのだから落ちはご想像の通りだ。見つかったよ、もちろん。
キチンとしておかないといけないと、変な気をまわして普段と違うところに保管していたのをすっかりと
忘れていた(爆)。さて、教訓じゃ。デジタルデータはすぐ保管。それと、物忘れ、〆切直前激しさを増す。
以上、パニックのワタクシでした。

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