女の子の部屋に潜入して惚れた昭和の名曲。

ディックセントニクラウス昭和の洋楽関連の仕事を仰せつかって、実に楽しい。タイトルを見てはその曲にまつわる想い出がフラッシュバックするのを繰り返し「忙しいんだからやめなさい」と言い聞かせているここ数日である。そんな想い出の中で極めて異彩をはなっている存在がこれだ。あまり知られた存在でないかもしれないが、ディック・セント・ニクラウスの『マジック』だ。中3の夏前のヒットだった。

このブログでちょくちょく出てくるFM番組『ダイヤトーン・ポップスベストテン』で聴き、日本人好みの物悲しいメロディに好印象を持った。当時ロックモノに夢中だった僕にこれほどの良質なポップスは守備範囲外だったが、記憶にしっかりと残った。そしてこの夏、大きな事件(!?)が起こったのだ。女の子の部屋に潜入した。とはいえ、恋でなけりゃ夜這でもない。なんのことはない、電器屋を営んでいた親父の手伝いでクーラーの取り付けだ。

バカデカイ家で金持ちだろうことを容易に想像させた。それはこのクーラーの取り付け現場が個人の部屋であることからも、そんじょそこらの金持ちでないことを知らされたのだ。今でこそ個人の部屋にクーラーはあたり前かもしれないが、当時のクーラー取り付けは居間に初めてつけるというのがほとんどだった。東京下町ではそれでもずいぶんの背伸びだったのに、ここは娘の部屋に取り付けてあげちゃうのである。女の子らしくデコレーションされた部屋にはステレオとテレビ、エレキギターまである。きっとカワイイ女の子だろうなんて想像しながら、歳は2つ上の高2だと勝手に断定して真心を込めてクーラーを取り付けたのだった(笑)。

ステレオの上に無造作に置かれたドーナツ盤が『マジック』で、直前のヒットの記憶がよみがえった。エレキギターを弾くようなナウでヤングな女の子が、この曲を好むのかと強く印象づけられたのだ。バイトで得たお金を音楽につぎ込めるようになった高校生の頃、この曲を中古レコード店で探した。が、僕はこのシンガーのディックをジャックと記憶違いしていて、どこで尋ねても出会えることはなかった。そのまま発掘できずじまいだったのが、3年ほど前に『昭和40年男』関連の仕事で再会できた。そして今頭を悩ましている仕事の原稿にも、この曲が入ってきたのだ。こうして巡り巡って再び出会えたのは心地よい。って、またまた時間旅行している僕はダメな男ですな。とっとと仕事せいっ。

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