節分と立春。

2011 年 2 月 3 日 プロデューサー コメント

「鬼は〜外、福は〜内」
長かった冬も今日でおしまい、いよいよ春がやって来ますな。
明日は立春であり、僕にとっては大きな記念日でもある。
ひとり息子の誕生日なのじゃ。今年年男の24歳で、まだ大学に
通っているというバカ者であるが、いくつになってもどんなに
出来が悪かろうとも大切な存在であることには変わりない。
24年前のちょうど今日のこと、僕は目黒のライヴハウスで
歌っていた。出産予定日まで2週間以上あった女房は、大きな
お腹で応援に来ていた。里帰り出産のためこの日の数日前から
実家へ戻っていて、この日も目黒で別れ帰っていった。僕たちは
当然のことながら朝まで打ち上げで、いつもたむろしていた部屋に
メンバー全員で酔いつぶれて寝ていたのだが、ギタリストが
訴える変調で目が覚める。ヤツは出産時のトラブルで片目が
見えなかったのだが、そこへ来てソフトコンタクトをつけっ放しの
まま寝てしまい、見える方の目がほとんど見えないという。
つまり両目とも見えない状態だ。げっ、そりゃあまずいと背中に
おぶって目医者へと連れて行った。

 

最悪の事態ではないとホッとしてたまり場に戻ると、そこの
お母さんから「大変、奥さんが入院したそうよ」とのこと。病院の
電話番号を聞きかけてみると「もう産まれちゃったわよ」と、義母が
あきれながら言う。「もう、どこにもいないんだから」
「足とか、手とか、×▽■は、●□△には…、大丈夫だった?」
わけのわからない動転しながらの質問をかぶせると
「元気な男の子よ」と帰ってきた。
ライヴを見に来た翌日の朝破水があり、そのまま入院して
(もったいないからタクシーに乗らず、歩いて病院まで向かったそうだ)
産まれたとのことだ。ついさっき、ギタリストの目の治療に病院に
行くからとバイト先に遅刻の連絡をして、今度は子供が産まれたから
さらに遅れると電話を入れたら、暇そうだから休んでいいと気づかって
くれた店長だった。

 

急げ急げ。病院最寄りの駅で、産まれて初めて女性に花を買った。
厳密にいえば母の日カーネーションがあるが、あれは女性でない。
母だからね(笑)。「バラの花を30…、いや20本花束にしてください」
当時で1本350円だったから、1万円超えはチョット…、だが7,000円も
する花束だったのだ。女房は歩いていったにもかかわらず、僕は
1分でも早く子供に会いたくてタクシーを飛ばした。部屋へ行くと、
彼女は見たことのない顔になっていた。
「これが子供を生むという人間最大の大仕事を終えた顔か」
そう心の中でつぶやいた。何百万部の雑誌をつくるよりも、小説を
書いて直木賞を取るよりも、どんな仕事にもかなわない尊い仕事で
あるのだ。やり遂げた彼女に花を渡した。そしてガラス越しの息子と
対面した。元気に泣いている姿を見ていると、みるみるガラスが
曇ってしまったよ。うれしかった。

 

実家そばの蒲田の病院だったので、もし式を挙げていたら仲人を
頼んだであろうほどの世話になっている兄弟のやっている店に行った。
 「産まれました、男の子です」
 「おーっ、よかったなあ」
そう言って、ステーキをご馳走してくれた。うまかった。ものすごく
うまかったよ。1人の家に帰り、いつまでも喜びを噛みしめていた。
と、そんな想い出が節分と立春なのさ。

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