大編集後記その壱。ああ憧れの「仮面ライダー 変身ベルト」。

写真 2-3僕にとって、このベルトほど欲しがったおもちゃはない。今に続き僕の物欲が強いのは、コイツが存在したからだと言っていいだろう。加えて言うならば、後にちょっとだけ大人になって欲しがったデコレーションがガンガン施されたチャリンコが、僕の子供時代の2大欲求だった。その後というもの、物欲にいつも振り回されながらの人生を送ってしまった。そのとば口で燦然と輝いた『仮面ライダー 変身ベルト』は、僕の人生を狂わせた罪作りなおもちゃである。

親父に嘆願をし続けた僕だった。近所で持っているヤツなんかホンの一握りで、もしも手に入ればスターだ。遊びの中心だったライダーごっこで、永遠にショッカー役を演じなくてすむ。そして当時の絶対的な存在である仮面ライダーと、きっと気持ちをシンクロできるツールだとも思っていたのだ。ひたすら嘆願を続けた僕に親父はついに折れて、ある日買ってくると宣言したのだ。僕の勝利だ。情熱ってのは通じるのだと歓喜した。

買いに出かけた親父の帰宅までが長〜い時間に感じた。やがて、ついにその瞬間を迎えた北村兄弟の手には1本ずつ、どこからも見ても安物だとわかる白いベルトを手渡された。このとき親父は「どうだっ」と言わんばかりの笑みを浮かべていた。3歳下の弟にはこれで十分だったかもしれないが、僕はひどく落胆した。小さな赤い風車が付いていて、電池を入れるところなんか見当たらない。そう、この風車は自分の指で回すのだ。歓喜が大きかった分落胆が大きかったが、下町の長屋で電気屋を営む親父にとってはこれが精一杯だったのかもしれないと、子供心に理解して気持ちを収めた記憶があり、「ありがとう」と言えたのも心の原風景に残っている。

そんな悔しさがあったから。そして冒頭にも書いたとおり、あまりにも強い影響があったから今回の特集の表紙はこれしか考えられなかった。欲しがっていた心がバッチリとよみがえる、高級感を漂わせる写真に仕上がっていて僕に火をつけたのだった。何パターンも何パターンも作った。「もうちょっと右」「もうちょっと小さく」とかデザイナーに指示を出し続けて完成したのが、この表紙である。

当時、変身ベルトを買ってもらえず、僕と同じように悔しさを感じていた昭和40年男たちに心を込めて送ろう。さあ、コイツを手にしてあの日の無念を晴らすがよい。いよいよ、明日が発売日だ。…って、持っていた幸せな方々も最新号を手に取って頂戴(笑)。

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3件のコメント

  1. 訂正   2006年 バンダイ \31,500でした。10万円じゃありませんでした。黒でもないです。

           親父の記憶は曖昧。w これでは警察などに目撃証言できませんね!w

    すみませんでした。

    • 訂正までしていただきありがとうございます。
      仮面ライダー自転車はまさしく僕も同じ状況で買ってもらえませんでした。しかも僕の所有していたのは極めて飾りっ家のないヤツで、このコンプレックスが後の派手なデコレーションの施されたピカピカチャリへの欲求につながったのだと思います。

  2. 今から10年くらい前でしょうか?大人向けに復刻版が出ましたよね。10万円。
    本革仕様で黒だったと思います。購入した大人がブログで自慢してたのを見たような記憶が。。。?
    子供の頃、私はどちらかというと、仮面ライダー自転車が欲しかったです。でも既に自転車を買ってもらっていたので、サイクロン号カウルだけ買ってもらって、既存の自転車に付けてもらいました。

    ウルトラセブンのメガネもほしかったな~。w

    あすのポッキー・プリッツの日に発売されるこの本、楽しみです!
    プリッツはカバヤ、でもカバヤではプリッツって言わなくなったらしいです。(余談)

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