湯豆腐解禁。

呑むのは大好きだ。
だから次号は呑んべえをテーマに特集を組んでいるといってもいいだろう。
呑んでいるときはたくさん食べる方ではないけれど、ウマイ肴はやはり酒席を盛り上げてくれるものだ。
焼き鳥と煮込みはいつだって最高だし、寿司屋でいいマグロの赤身に出会うと神に感謝する。
生ハムの塊を目の前で切ってくれれば涙が出てくるし、炭火で焼いたタン塩は天へと昇る。
いろいろな選択肢とシチュエーションの中で、ランキングなんかつけられないものだ。

ところが、家で呑む場合にはダントツのランキングNO.1メニューが存在する。
ジャーン、それがーっ、湯豆腐です。
パチパチパチ。
もちろん家で呑むときにも多くのうまい肴は存在するが、
ランキングとなったら断然湯豆腐なのである。
土鍋に水を張り昆布を入れ、真ん中に醤油と鰹節と
小口に切ったネギをたっぷりと入れた湯飲みを配置する。
湯は沸騰させないように、表面がゆらゆらするくらいの火加減をこまめに調整しながら、
豆腐と鱈をペースに合わせて投入していただく。
豆腐は固めの綿豆腐がいい。
鱈は冷凍物でない、新鮮な甘塩鱈を選びたい。
とにかくグラグラと湧かさないことがポイントだ。
豆腐が昆布だしをたっぷりと吸い込み、独特の柔らかさを演出する。
だったら絹豆腐でいいじゃないかとの意見もあろうが、アレは綿に比べると昆布だしを吸わない。
それと柔らかすぎるのだ。
角に頭をぶつけて気絶するくらい(!?)の豆腐が、魔法のように柔らかくなるのを楽しみながら
土鍋の偉大さに感謝するのだ。
土鍋の中にしみ出た昆布のグルタミン酸系のだしと
センターにセットされ続けた湯せん状態で醤油にしみ出た鰹節のアミノ酸系のだしが
器の中での中で融合する。
もうねえ、最高なんですよ。

なんで家だって?
外で頼むと余計なものが入っていたりするし、ポン酢で食わせるのなんか論外だね。
それと、火加減をチョコチョコ調整している究極の鍋奉行ぶりを見られるのはイヤだから。
鍋は大勢でつついた方がいいというけど、湯豆腐だけは別だ。
1人でもよくやるほど愛している。
いつも大晦日の夜は、湯豆腐で過ごす。
だらだらとテレビを見ながら何時間も鍋をゆらゆらとさせ、年を越してもそのまま続けているというのは
僕にとって1年で最大の贅沢かもしれないなと感謝しながら。
大好きな湯豆腐がゆえ、夏でもどうしても食べたくなってついついやってしまうけど、やっぱり暑い。
それと魚に雪と書いて、まさに鱈だよ。
夏はどうしても冷凍物のしょっぱいものが多いから、結局後悔することになるのだ。

少しずつ寒くなってきて鱈も旬を迎え、いよいよ湯豆腐解禁だ。
次の家呑みは、湯豆腐に決まりだね。
ねっ、食べたくなってきたでしょう?
皆さんの鍋自慢も聞きたいなあ。

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