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昭和40年男の食の変化!!

2014 年 7 月 2 日 プロデューサー コメント

カレイの煮付けこんなものをうまいと思うなんて、少年期の自分にはまったく想像がつかなかった。皿に気遣いがなく少々見てくれが悪いが、今まさに旬を迎えているカレイの煮付けである。この料理話の本丸へと向かうのに少々回りくどくなるが、おつき合いいただきたい。

昭和の下町荒川区には個人商店がたくさんあった。今では考えられないほど充実していて、僕が住んでいた長屋の前に続く200m足らずの道路には、集客力抜群の銭湯がドーンと構えて、その隣には汗をスッキリと流した老若男女を迎え入れる果物屋があり、夏の子供たちはスイカやアイスをねだる。花屋、蕎麦屋、寿司屋、ガラス屋、文房具屋、パン屋、乾物屋などなどがひしめき、我が北村テレビ商会はその道路のほぼ真ん中に位置して、まるで主役のような気分を僕は胸に秘めていた。確か荒川二丁目商店街との名がついていたように記憶している。この道からは逸れるが、周囲の徒歩数分圏内にほとんどなんでもそろうように商店が配置されていて、とてもよいバランスが取れていた。医療機関もほぼすべてがそろい、今よりずっと便利で快適な街だった。

商店を営む奥樣方を狙って、商売はサービスを充実させていく。寿司屋やそば屋は出前でかけずり回り、この充実ストリート外からも刺客が次々と襲来しては牙を剥く。玄米パンに焼き芋、夜鳴きそばは土曜日の夜に開催される家族トランプ大会時のお楽しみだった。なぜに毎日のように来るかがはなはだ疑問であった「た〜けや〜、さおだけっ」に我が家は一度も世話になったことはない。ラッパを吹く豆腐屋のおじさんのほっぺたが異様にふくらむのに、職業病の恐ろしさを感じたりもしていた。

そうした襲来ビジネスで、僕が大嫌いだったのが魚屋だ。勝手口におばちゃんが現れ、今日の魚のラインナップをお袋に告げる。「うーん、どうしようかしら」と迷う仕草を見せようものなら完全に餌食だ。「お母さん、負けてダメだ」と僕は心の中で悲痛な叫びをあげる。「いいわよぉ、今日の○○は」とたたみかける魚屋のおばちゃんはお袋より年上だ。いやいや、お袋だって電気屋を切り盛りする女傑だ。「負けるなっ、がんばれ」と声無き叫びを繰り返す。だが当時の電気屋は忙しく、さらに育ち盛りの男兄弟を育てているお袋にとって、買い物に行かないですむそのラクチンさの誘惑はたまらなかったことだろう。そしておばちゃんの巧みな話術に誘われることで、自分のさぼりを正当化するかのごとく「じゃあ○○を4枚ちょうだい」となるのだ。その瞬間に少年の最大の楽しみである夕食のおかずが魚に決定して、僕の心はズタズタになるのだった。

その中でもとくに涙あふれるツライ選択が、夏のカレイと冬のヒラメだ。双方ともに旬を迎えるとおばちゃんの押しが強くなり、親父の好物とあってその注文は少なくない。こんなものどこがうまいのだと、脳内に脂の滴り落ちる肉を想像しながらメシを食らうことの悲しさは、山より高く海より深かった。

時は流れて30余年。カレイとヒラメは僕にとって最高のごちそうに登りつめた。つい先日も、夏の到来を楽しむように、こうして煮付けをいただいたのである。加齢とともにカレイに魅かれる…。おあとがよろしいようで(失礼)。

 

 

   

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    浅野
    2014年 7月 2日 20:44 | #1

    事情は違うけど、小さい頃の魚のおかずは勘弁してって感じは一緒(。>д<)
    地域特性により親戚近所が水産関係。
    誰の船が帰って来たと言っては、冷凍マグロの切り身。
    時期になれば鰹、さんまと買わなくても魚…
    一番の地獄は遠洋漁業から親父が帰って来た1ヶ月間、毎日毎日魚料理。
    なんでも良いから肉食わしてって。
    刺身でご飯なんてあり得ないって40歳くらいまで思ってたが、今は大好き。
    ただ、カレイは焼きも煮付けも好きだったなぁ。
    特に煮付けの汁かけてご飯食べるの。
    次の日は煮こごりでご飯とか。
    逆に今はやらないが、やってみるかな?

  2. 浅野さん、ありがとうございます。
    マグロに鰹にさんまとは、今考えればすべてごちそうですね。さんまのハラワタをうまいうまいと食う親父とお袋は、味覚障害だと思ってましたよ(笑)。
    煮付けの汁かけご飯は僕もよくやりました。それでなんとか三杯飯を食っていたのだから、子供なりに頑張ってたなあ。

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    B太(中)
    2014年 7月 3日 10:02 | #2

    青森生まれの自分も、ガキの頃は魚がおかずの日は凹んだなぁ~。
    今は中国大陸の真ん中で海の無い生活だから、魚といえば川魚。鯉はまだしも雷魚には閉口、、、。
    命懸けで食べる刺身は、いつも「頼まなきゃ良かった・・・」と後悔する羽目になる。
    青森の魚料理に凹んだなんて、何と罰当たりなガキだったんだと、49になって反省している。

    カレイの煮付けで一杯呑った後、翌朝はプルプルの煮こごりを炊き立てのご飯に載せて戴く、、、。
    ドラマ「深夜食堂2」(←中国でも結構有名)でも取り上げていたけど、こういう喰い方をする日本人は本当に美食家だと思います。・・・あぁ、玉子かけご飯が食べたい!!!

  4. B太さん、ありがとうございます。
    雷魚は小学生の時に親戚の家で一度食ったきりです。おいしくなかった記憶はしっかりと残ってます。

    中国大陸ではさぞ食に困っていることでしょう。うまそうなカレイを載せてしまい、気の毒だったかもしれませんね。
    お身体に気をつけて頑張ってください。

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