ブルース・スプリングスティーンの新作『ハイ・ホープス』がスゴイ。

ハイ・ホープス

ブルース・スプリングスティーンの新譜が発売されたのは先月の29日で、すぐに手に入れた。大好きなブルースの作品だから、キチンと聴き込んでから報告しようと今日までかかってしまったが、本日のタイトルどおり「スゴイ」アルバムだ。

『明日なき暴走』にぶっ飛ばされた高校時代から、30年以上に渡って僕を刺激し続けてくれている。よい作品とそうでない作品はもちろんあるものの、彼の熱はどの作品にも強く込められて届く。その熱の色は、真っ赤だったり青みがかっていたりはするものの、冷めたアルバムは一枚もない。そして今回は真っ赤に燃え上がる熱で、押されまくってしまうこと必至だ。初っぱなの「ハイ・ホープス」からブルース節が炸裂する。

ブルース節ってなんだろう?  まったくの私見で恐縮だが、歌に込められた魂の圧力が飛び抜けて凄まじいことに尽きると、いつもそう感じている。受け止めるだけの強い心を、聴き手サイドも準備しなければならないほどだ。ボブ・ディランとニール・ヤングに並び、魂圧力三羽ガラスだと僕は受け止めている。心の奥底までじっくりと入り込んでくる圧力は、鋭さよりも圧倒的な強さと大きさで迫り、そして根源的な愛が散りばめられていることも共通している。それはライブでは増幅して押しまくってくる。僕は幸運なことにこの3人の凄まじいステージを経験していて、どの記憶も宝物のように大切にしている。余談ながら、ジミヘンのギターやジャニスの叫びに込められた圧力も凄まじいが、種類としてはこの2人は鋭利な刃が突き刺さってくるようで、三羽ガラスとは若干種類は異なる。

さて、『ハイ・ホープス』だ。64歳とはまったく感じさせることなく、凄まじいばかりの魂の圧で押し寄せてくるようだ。とは言え、曲調に関しては変化に富んでいて、それはまず今回のアルバムが長きに渡って書きためてきた曲やライブでの定番ナンバーで構成されているからだろう。加えて、レイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロが参加していることも大きいようだ。彼の意見を多く取り入れたと伝えられていて、その効果はサウンド面で強く感じられる。歌詞にはいつもながら様々なメッセージが込められていて、これに関してはまだまだ時間をかけて解釈を成熟させていきたい。僕にとってブルースのアルバムを聴き込むのはこれが楽しみであり、三羽ガラスはその点でも共通で、少しでも彼らのメッセージを深く解釈しようと聴き込むことにしている。その点では、まだレビューを書ける段階でないのだが、これまで幾度となく繰り返し聴いてきて、サウンド面と歌の強さ、作品としての全体クオリティのどれを取っても素晴らしいと、自信を持ってレコメンドできるに至った。

そしてビックボーナスである『ボーン・イン・ザ・U.S.A.』の全曲ライブDVDはまだ味わっていない。一日でも早く、ここに新作のレビューを載せるのが責務だと思いグッと我慢して、僅かな時間を見つけてはアルバムの方を聴き込んできたのだ。これでやっとDVDにいけるが、〆切作業がグイグイと押してくる時期なので、これまたもう少しお預けとして、終わらせてスッキリとしてから聴くことにしよう。だが、このビッグすぎるおまけがなくとも、新譜『ハイ・ホープス』自体に十分な価値がある。50歳を目前にした我々に、パワーを注入してくれること間違いなしの傑作である。
 

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