すっと大好きミートソースのスパゲティ。

スパゲティミートソースは子供の頃よりずっとごちそうだ。母親が煮てくれるミートソースは、少しゆるめでケチャップがガンガン使われた甘めのものだった。学校の給食で出てくるソフト麺にかけていただくミートソースも大好きだったな。やがて高校生になると、喫茶店のスパゲティがいつも僕を満足させてくれた。小さなサラダがついてきて600円とかそんなものだった。今に比べたら街に喫茶店がたくさんあって、どこも同じような味がしていたけっけ。麺に対してソースの量がやや物足りないのも共通だった。

そんなミートソースの概念を変えたのが、本格的なイタリアンブーム到来の前にでき始めたスパゲティ専門店だった。100種類のメニューが自慢なんていうような店が、飲食街に登場し始めて目立つようになってきたのは僕らが10代の後半くらいからだろうか。これらの店によって、明太子やあさりの和風、納豆スパなんてのもメジャーになり、同じ頃に増殖し始めた『イタリアントマト』によってトマトスパゲティがメジャーな存在になった。同じ赤いソースでも、ミートソースとはまったく異なる仕上がりに、異国の食文化をのぞき見た気がした。

女子供が好みそうなこうした店に1人で入れないのは当時から変わらず、彼女に連れて行ってもらう。前述のようなスパゲティ専門店に入り、彼女はそれまでに食べたことのないようなメニューにトライするのだが、僕はといえばここでもミートソース一辺倒だった。そんなに好きなのかよとか、子供っぽいとかいわれながらもひたすらオーダーを続けた。ここで出会った味が、現在の僕のミートソースの原型となっている。自分で拵えるようになって追いかける味はこのときの味の記憶だ。

ミートソース
見よ、この大量に仕込まれたソースの量を。コイツを2/3くらいになるまでじっくりと時間をかけて煮込む。至福のときでもある

年に1度、大晦日から元旦にかけてソースを煮込むのが、ここ近年の恒例になっている。この年末にもとりかかり、足掛け2年でキッチリと仕上げた。家中に立ちこめるいい香りは、我が家の年越しになくてはならない空気を運んでくる。ただ煮込むだけの料理なので、毎回工夫を凝らすのは材料の比率だ。ひき肉は毎度2.5キロを用意して、これに対して野菜をどのような比率にするかで仕上がりが大きく変わる。前回、野菜が少なく甘みが足りなかったとの反省から今回はタマネギを10個から14個に増量。キノコ類も増やし、いつもは入れないニンジンを入れてみた。バッチリ仕上がったミートソースは、幼少から変わらない大満足の1皿になり、正月を彩ってくれた。もちろんこんな量を正月だけでは消費できず、小分けにして冷凍庫に納まり、ずいぶんと長いこと僕を楽しませてくれるのである。ちなみに今日出場する『勝田全国マラソン』の前日は、これでパワーチャージするのも恒例になっている。さあ、そろそろ出かけるとするか。バッチリとエネルギーになって、僕の激走を支えてくれることだろう。

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