大編集後記その拾。プリンスの『パープル・レイン』に痺れた夏。

いい週末を迎えてますか? 暮れの激務に備えて充電しようと思っている方には絶好の1冊となるはずだ。なにがって? 『昭和40年男』の最新号だよっ!!

パープルレイン洋楽の情報源として頼りにしていたビルボードチャートについてアレコレ語る『Time slip! bilbord』は、前号より僕も参戦して担当ライターの宇都宮氏と火花を飛ばしている。今回は1984年の11月24日にフォーカスした。昭和40年男は19歳になる年で、当時は音楽が重要なツールにもなっていたはずだ。とくにクルマの助手席に憧れのあの子を乗せた時、極めて大きな役割を果たしていたことだろう。

ここにいたる以前の数年は、なんとなくカテゴライズすることに忙しい音楽シーンだった。ディスコブーム以降、パンクやヘビィ・メタル、AORなんてのも幅を利かせて、音楽専門誌も次々と現れる新しいシーンを盛り上げ続けていた。そんな喧噪が一段落したのが、僕らの18歳くらいだろうか。なんとなくカテゴリー分けに飽きてきた。それは、出てくるミュージシャンたちが作り出す音が、より多彩になったからなのかもしれない。そんなシーンに現れたプリンスの衝撃は大きく、今回のランキングでは2位に『パープル・レイン』をチャートインさせている。

当時の僕は、高校を出て本格的にプロミュージシャンを目指して音楽活動に入った時期だった。が、一緒に走っていくはずのドラマーが脱退してしまい、迷走が始まった時期でもあった。いろんなドラマーと合わせてみるものの、しっくり来ない。活動を止めたくないから、一時はなんと僕がドラムを叩きながら歌うスタイルを検討したほどだった。ライブは実現しなかったが、ともかく曲を書いて僕がドラムを担当してアレンジを続けるという、足踏みの時期だったのだ。

この夏のある日、バイト先の先輩たちから海に行こうと誘われた。居酒屋のバイトで、終了する午前0時に出発して約2時間ほどの夜中のドライブを楽しみ、到着すると24時間営業の海の家でビールを呑んだ。酔っぱらいながら迎える朝焼けが最高の気分にさせてくれ、夏が来る度に何度も出かけたのだった。現地を昼の12時頃に出て、そのままバイト先に直帰する。酔っぱらって泳いでほとんど寝ずに帰ってきて、そのまま午前0時までバイトできたのだから若いって素晴らしい。

深夜の道をかっ飛びながら先輩が流したテープの衝撃ったら、今もハッキリと覚えている。それがプリンスのアルバム『パープル・レイン』だ。オープニングから僕好みで、ちょっとマーク・ボランぽいかななんて聴き進めていくと、奥深くてまさしくカテゴライズするのがバカバカしくなる凄さを感じたのだった。そしてラストのアルバムタイトルチューンにガツンとやられた。なんちゅう曲じゃと。ブツブツしゃべっているかと思ったら、すげえカッチョいいブリッジからサビへといく。どのパーツもシンプルなメロディながら、聴く者に強く入り込んでくる。これが現在のリアルなんだなと、音楽活動がうまくいっていない僕を大いに刺激してくれたのだった。

こんなすげえバラードを書きたいと、何曲も作ってはゴミ箱に捨てた。やっと1曲書き上げたものの『パープル・レイン』には遠く及ばないクオリティで、バンドで必死になってアレンジしたもののお披露目の機会を得ることはなかった。

みなさんの19歳の夏には、どんな音楽が染み付いているだろうか? 今回取り上げたランキングは秋なのだが、僕にとって『パープル・レイン』はまさしく夏の夜の曲で、そこに染み付いた想い出を鮮やかにフラッシュバックさせてくれたランキングだ。ちなみに1位はWhamの『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ』だ。それにしてもこの邦題のセンスは素晴らしいですな(笑)。

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