キッスが舞った『ミュージックステーション』。若者にはどう映った?

キッス昭和40年男だったら1度は聴いているのでないか。日本でもっとも高い人気を誇った時期が小中学校時代だから、もう30年以上前のことだ。そのキッスが昨日、お茶の間に騒ぎを起こしたのだ。当然ながらビデオに撮っての深夜視聴だったが、大人数で組まれたアイドルに混じって登場したキッスは、かつて『夜のヒットスタジオ』にRCサクセションが出演した時を思い出させる痛快さがあった。

圧倒的な存在感で、斉藤和義さんもタモリさんでさえ存在感では劣る。まあ、デッカい上にメイクじゃあたり前かもしれんが、でもそれだけじゃない。40年以上、エンターテイメントとしてのロックだけを追い求めてきた強さがあった。トークもサービス精神が旺盛で、よくよく考えたらこんな風にキッスを見たのは初めてである。

番組は頭から3組の集団ダンスを見せられ続けた。今の若い人たちはこれだけ大勢のアイドルの名前とかを覚えるのだろうか。それはそれでスゴイことで、キッスの4人の名前を覚えるだけで胸を張れた時代と比べると、ずいぶんとレベルが上がっているともとらえられる。だが、まったくおもしろくないのはおっさんだから仕方ない。ビデオなんだからすっ飛ばせばいいものの我慢に我慢を重ねて待ったのは、番組の中でキッスがどんなインパクトを与えるかをしっかりと感じたいから。

そしてやっとキッスの出番となった。演奏に入る前に、恒例のインタビューから始まった。音楽と関係のない質問に次々と答えているここでも、彼らのエンタメスピリッツがガンガンに詰め込められていた。もうホントに痛快である。一流ってのはこうでなくてはイカン。そして演奏も楽しいもので、なにも衰えていないキッスそのものだ。曲は昭和40年男たちが中2の時の大ヒットチューンの『ラビン・ユー・ベイビー』なのだから、テンションがあがりまくった。いやあ、素晴らしかった。

番組はこの後、斉藤和義さんの『やさしくなりたい』からトリはTHE STRYPESなるバンドが登場した。これまたすげえバンドがいるものだと度肝を抜かれて、前半とはまったく異なる切れまくった3組となっていた。この番組はこうした狙いのものとに作られているのだろうか。今後にも注目してみようかと思わされた。

それにしても、キッスの『ラビン・ユー・ベイビー』が現代に、しかもゴールデンタイムのお茶の間に流れるとは、中2の僕はまったく想像できなかった。中学生くらいの頃、親父がNHKで懐メロを見て唸っているのを横で見ながら、将来自分もこうなるのかと思っていたとおり、懐メロはよい。ただ、ロックなのはちょっと鼻高々であると思っているのはものの、若者たちから見たらきっと当時の僕と同じように映っているのだろうな。

ところが、今朝面白い現象を目撃した。出社途中の道で小学生の低学年くらいの女の子が、一緒に歩いている父親に「パパ、キッスって知ってる」と質問しているじゃないか。向かいから来た親子で、僕は出社途中だったからこの言葉しか聞き取れなかったが、想像するにジャニーズファンの彼女は楽しみにしていた関ジャニ∞を見終えて登場したキッスにビックリしたのだろう。そしてきっと興味を持ったのだ。
「ママ、この人たち誰」「ママはよくわからないけど、きっとパパは大好きなんじゃない」「フーン、明日聞いてみようっ」となったのだ。お父さんは金曜日の夜8時にお茶の間になんかにいないから、大筋としてはこんな感じで間違いないだろう。ロックならば懐メロでも若者に通用する。しかも、小さな女の子が興味を持つのだから、堂々と懐メロを支持しようではないか。

昨日見逃した昭和40年男は相当の数だろうし、完全にノーマークで今これを読みながら悔しがっているのではないだろうか。ハッハッハ、僕は満喫しましたよ。

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