デヴィッド・ボウイの魅力。

本誌連動企画の『3番勝負!』には投票いただけただろうか? 今回は若かりし日々を盛り上げてくれた洋楽シーンの中から、ソロシンガーの勝負にしてみた。出題者の僕より、思い入れたっぷりに解説させていただきたい。こんな対決はそうそう見られるものじゃないとの第1ラウンドとなっている、ロッド vs ボウイの勝負は、現在予想通りの接戦じゃないか。昨日は大好きなロッドについて述べさせていただき、今日はやはり大好きなデビィッド・ボウイについて語ろう。

レッツダンス多くの昭和40年男が初めて彼にふれたのは『レッツ・ダンス』であり『戦場のメリークリスマス』ではないだろうか。昭和58年の春のこと、きれいな金髪にブカブカのスーツを身にまとった色男がブラウン管に姿を現した。洋楽を深く聴き込んでいた連中にとっても、その姿はかつて知っていたボウイとはまったく異なる姿だった。どちらかといえば気持ちの悪い存在だったのが、突如変身したのだ。ここにロッドとの対決の意味がある。昨日述べた、ロッドはイギリスからアメリカに渡って昭和50年に『アトランティック・クロッシング』を作ったときに、ロック小僧からスーパースターへとの変身を試みて、やがて見事に成功した。ボウイはそこからやや遅れて、宇宙人からメジャーヒーローに変身したのだった。だがこれ以前にもその兆候はあった。英国の香りばかりさせて、カルトに突っ走っていたボウイが『ヤングアメリカン』のリリースで小さな変身をしている。これも偶然ながら昭和50年で、ロッドがアメリカに渡った年に重なるのも、2人を対決させるのは面白い現象といえる。

ブカブカのスーツを揺らしながら『レッツ・ダンス』を歌う姿は、お尻フリフリのロッドと対極にありながら、カッコよさでは共にロックシーンの頂点にある。高3の僕に強く訴えかけ、それまでのグロテスクなボウイをすっかり忘れさせた。そして同じく訴えかけてきたのが『戦メリ』のボウイだった。これまた宇宙人とはまったくかけ離れていた。スクリーンに映し出された甘いマスクと形容するのがしっくりとくる存在に、完全にノックアウトされたのだった。教授が惚れるのも無理はない(笑)。歌と演技で17歳の僕に強烈に迫ってきて、それまであまり興味を持たなかった以前のボウイにもふれ、まったく異なるもののやっぱりボウイだとの解釈を得て、あらためて虜になったのだった。アルバム『レッツ・ダンス』のオープニング曲である『モダン・ラブ』はボーイのベストソングの1つに挙げ、一方『ジギー・スター・ダスト』もやはり挙げられ、双方共に見事にボウイなのだ。素晴らしい変身ぶりに学ぶこと多く、それまでメジャーに媚び売るようなミュージシャンを偏見で見ていた自分を小さく感じさせてくれたのだった。17歳にしてこんな発見をさせてみもらったことに感謝している。

ザネクストデイツアー中に倒れ、もうデヴィット・ボウイから新作は届かないものだと誰もが思っていたところに、シングル「ホエア・アー・ウィー・ナウ?」が、なんの前触れも無くリリースされたのは今年1月のことだった。そして3月には10年ぶりとなる新作『ザ・ネクスト・デイ』を発表した。約2年かけた制作の模様は一切報じられることなく、世界中をビックリさせた復活劇だった。先日のサザンみたいですな。アルバムオープニング曲で「ここにいる。死んではいない」と高らかな宣言をするかの、アルバムタイトルチューンの『ザ・ネクスト・デイ』は、ボウイのベストソングの1つに加わったのだった。大好きなボウイの復活宣言となったこの曲は、涙なくしては聴けなかった。そして、まだまだ続くだろうボウイの活躍を期待させる曲だ。

さてさて、ロッド vs ボウイの対決に、あなたの1票はどっちだ!!

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