今日、癌の手術を受けた男の話。

7つ年上で、ご近所付き合いから始まって今ではよき兄貴分であり、呑み仲間であり、親友でもある男に膀胱癌が見つかった。もう1ヵ月以上遡るある日、血尿が出たとのことで医者にかかったと聞いた。残業と休日出勤をべらぼうに重ねていた彼だから、きっと疲れが出たのだろうと僕は言い、本人もあまり気にしていなかった。気にしていないどころか、そのことを話しながら呑んでいたのだ。が、後日連絡を受けたのは、大きな病院で看てもらったら膀胱癌が見つかったとのことだった。身近に癌の話が増えてきているが、みんな60歳以上の方々の話で、50代で近しい人が癌との話はこれまでなかった。彼はたいしたことないと付け加えながら、僕を含んだ仲間たちに打ち明けたのだった。

手術に向けて様々な検査が始まった。よほどの救急でない場合は、入念な検査が繰り返されるのは大きな手術を受けた方ならご存知だろう。そして残念なことに、検査中に腎臓にも癌が見つかってしまったのだ。「まいったよ」と、先日手術成功に向けた宴(いいのか?)では、さすがに少々へこんでいた。腎臓の方は全摘になるそうだが、どっちの手術も内視鏡手術でダメージの少ない方法でできることは、テニスを愛する彼には助かったとのことだった。

癌は治る時代になったとはいえ、その宣告を受けたショックが大きいのは自分に置き換えればよくわかる。それが、検査中にもう一発とはどれほどのものか。ところが彼は強くて、手術成功祈念呑み会の席でも極めて気丈にふるまい、常に笑いを提供していたのだ。僕には絶対真似できない。そして翌日に手術をひかえて入院した昨日のベッドより「明日から癌との闘い2連戦に挑みます」とのメッセージが入り、手術を数時間後にひかえた今朝は「いよいよ不良とのケンカ1発目。勝つのみ!早く酒呑みたい」とのセリフが届いた。この強さに泣けてきた僕だ。そして夕方、仲間を繋げるLINE上に待ちに待った無事の知らせが上がり、ついさっきはもう疲れたから寝るとのことだった。初めて経験する癌との闘いのひとまず第1ラウンドを戦った勇者であり、讃えたい気持ちでいっぱいだ。〆切作業にも弾みが付くってもんだ。

今後僕らの周囲にこんな話が増えていくだろうことが、リアルに思える。そして自分自身だって、いつ大きな病の宣告を受けるかもしれん。遅すぎるが保険についても勉強した方がいいかな。少し前に『浅草秘密基地』で保険を話題にしたらたら、みんなしっかりした考えがあって焦ったばかりの僕だ。それもそうなのだが、彼のようにカッコ良くふるまえる胆力をつけたいものだと、反省と感動をさせられた今日である。

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