素晴らしき邦題の世界。

カルチャーークラブ連日洋楽ネタになってしまい恐縮だが、昨日J.ガイルズ・バンドを取り上げた際に、大ヒット曲『Centerfold』に『堕ちた天使』との邦題がついていたことを再確認して、かつての邦題の素晴らしさに思わず最敬礼しながら笑ってしまった僕だ。あの頃は、多くの曲に邦題がついていた。この『堕ちた天使』なんかは歌詞に添ってわりと正確なタイプの邦題といえるが、中にはまったく意味不明のものやキャッチコピーのごとく響きに重きを置いているものがあり、これらは非常に面白い。

クイーンの大ヒット曲で『愛という名の欲望(Crazy Little Thing Called Love)』なんてまったくの見当違いではないけれど、これってなんだか日本情緒を漂わせながら、とってもキャッチーなコピー仕上げじゃないか。『地獄へ道連れ(Another One Bites the Dust)』なんてのも素晴らしい。クイーンはファーストアルバムに『戦慄の女王(Queen)』なんて秀逸な邦題をつけ、中学時代にクイーンに興味を持った僕にはそそるタイトルで、アルバムが欲しくなる動機付けになるほどの魅力を感じさせたのだった。ただ、このアルバムのオープニング曲につけられた『炎のロックンロール(Keep Yourself Alive)』ってのは、ちょいと安易な感じでガッカリだったが。

まだ馴染みのなかった洋楽を、なんとか日本に浸透させようという先人たちの努力と工夫だったのだろう。キッスは地獄の軍団を名乗り、アルバムタイトルにも執拗に地獄がついていた。エアロのデビューアルバムの『野獣生誕(Aerosmith)』なんて邦題も、彼ららしいじゃないか。当時、一部の雑誌がおあっていた御三家が、女王と地獄の軍団と野獣とは素晴らしい。ちなみに野獣はデビューから約10年を経てリリースされたアルバムタイトルで『美獣乱舞(Rock In A Hard Place)』として、なんと野獣から美獣へと昇格しているのである。

80年代に入るとライトタッチ(!?)な邦題が多く見受けられるようになった。マイケル・ジャクソンの『今夜はビートイット(Beat It)』とかカジャグーグーの『君はトゥーシャイ(Too Shy)』とか、原題を活かしたものでありながら、ピリッ効かせた日本語で十分な笑いが取れる。そうそう、この流れの最高傑作はきっと皆さんもご納得するでしょう、ワムの『ウキウキ・ウェイク・ミー・アップ(Wake Me Up Before You Go-Go)』ですな…って、このウキウキは効き過ぎだな。

そして僕が邦題傑作ベストワンにあげるのは、カルチャークラブの『君は完璧さ(Do you really want to hurt me?)』だ。どこまでも愛しているのに届かない気持ち。僕を傷つけ続ける君。その君を完璧と褒めたたえるあたり、もうなにも言うことができない超越した世界を作りあげている。同じくカルチャークラブには『カーマは気まぐれ(Karma Chameleon)』なんて名作もあるが、『君は完璧さ』の足元にも及びませんな、ハハハ。

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1件のコメント

  1. 「ビート・イット」のパロディ「イート・イット」が忘れられません。

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