街にあふれるランチ難民。

夏休み2@

「ゲーッ、ここも休みだよ」
前を歩く3人組の男のうちの1人が叫んだ。飲食店が次々に夏休みに突入していて、今年は14日から5連休に入った店がとくに多かった。僕のオフィスがある浜松町は、空の玄関口羽田からモノレールが直結しているから、駅周辺の飲食店のほとんどは夏休みを取っていない。だが、家族連れで賑わう店内はやかましく、またうらやましく、できれば駅周辺は避けて昼飯を取りしたいから、お盆に突入した13日はオフィスが建ち並ぶエリアに隣接して飲食店が密集している場所に出かけた。開いている店がわリと多いことを確認できたから、翌日も出かけたら街は急変していたのだった。

夏休み@まるでシャッターストリートである。そしてこんな張り紙ばかりが目につくのだ。ビジネスマンを対象にしている店としちゃあ、きっと商売にならないと休んでいるのだろうが、どっこいみんな働いているんだぞとの、冒頭の言葉はそんな魂の叫びだった。僕も彼らと同じ店をターゲットしにして、半チャンラーメンを食う気満々でいたのだ。ガックリと肩を落とし、だが浜松町駅界隈のサマーバカンスの絶頂エリアには戻る気になれず、結局吉野家に入るとそこにはランチ難民であふれていたのだった。

夏休み3@

その翌日以降は、コンビニとチェーンの弁当屋さん、そして今日もやはりチェーンのそば屋さんで、冷しタヌキそばをすすってきた。そこには当然のごとく企業戦士たちであふれていて、高速道路のUターン渋滞とは無縁の猛者たちが寄り添っていた。少なくなったパイを、チェーン店ばかりが拾っているのは、個人店マニアの僕にはやるせない気分である。

我が家の近所も飲食店はほとんど開いていない。僕が住む街には世界に誇る大企業の本社と工場があり、そこをターゲットに個人店が多く立ち並ぶ。古い街のせいか大型ビルがほとんど無いため、チェーン店が入ってこないのだ。よりどりみどりの個人店を取っ替え引っ替え楽しめるのは、個人店マニアにとってはすごくありがたい。だが今週は月曜日からその大企業がストップしているから、当然それをターゲットにした飲食店も休む。おいおい、住人もいるんだぞと言いたいところだが仕方ない。

ちなみにこの会社は、震災の年からサマータイムを実践していて、もう今年が3度目となった。これに合わせて、街の飲食店たちは4時になると店を開ける、呑んべえにはたまらない街となっている。仲のいい焼き鳥屋の親父いわく、開店が早まっても閉店を早めるわけにはいかないと、労働時間が1時間長くなったとのこと。でも、本来厳しい夏の売り上げは上がったそうだ。微妙な時間のズレながらきっと心理的に開放感を生み、そのまま商売に好影響を与えたのではないかとも言っていた。新しい行動をすることって需要を作るのだなと確認させられた、いい現象である。

さて、週が明ければ飲食店は日常に戻り、企業戦士たちも戦闘モードに入る。今日あたりは家族サービスを終えて、明日までの束の間のやすらぎを楽しんでいるタメ年たちが多いことだろう。思えば今年も4ヵ月とちょっと。あっという間に過ぎていってしまう時間に突っ張って、そろそろ今年の仕上げに入ろうじゃないか。

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