ウォークマン初期型試聴。34年前の音への旅。

ウォークマン昨日に引き続きウォークマンの話をさせていただく。今回の特集で取り上げるために、ウォークマンコレクターの島田さんより数台を貸していただいた。この方そんじょそこらのコレクターでないのは、試聴用まで貸してくださるのだ。このすばらしい音にふれてくださいとのまるでメッセージで、試聴用のカセットテープまで仕込んである。では、昭和54年の音へと旅立とうじゃないかとこのバカ面である。

カセットに入っていたのは、僕にとってはど真ん中ストライクで響き渡ったレベッカの4枚目だった。『メイビィ・トゥモロー』が入っている昭和60年リリースの名盤『REBECCA IV ~ Maybe Tomorrow ~』だ。ちなみにこのアルバムは、この年の売り上げ3位の大ヒットを記録している。セールスに貢献した昭和40年男も多いのではないか。僕があげるレベッカのベストソングが、このアルバムのA面2曲目(懐かしい響きじゃ)に収録されている『プライベイト・ヒロイン』で、この曲のサビこそNOKKOさんの真骨頂だと僕は度々主張する。そして次点が『メイビィ・トゥモロー』であるから、このアルバムはお得だった。

試聴としたが作品の懐かしさも手伝い、結局丸ごと1枚聴かせていただいた。貴重な初期型(しかもコレ初期生産というレアものだって)をこれほど酷使してよかったのだろうか? そして聴きながら、こんなにいいコンディションのモノがこの世に何台残っているのかと、何度も何度もウォークマンを眺めていた。そんな爺さんのような表情で聴き入る僕に、編集部員はあきれるばかりだ。

それにしても音がいい。前時代のメディアであるカセットテープに収録された音を、34年前の機械が再生しているとは思えないクリアーさだ。初代機だからノイズリダクションはないのに、カセットノイズがこんなに少なかったのかと驚かされる。高級オーディオ機器を大切に保管してきたのならいざ知らず、大衆モバイル再生機である。もちろん、当時の我々にとっては安い買い物ではなかったが、その名のとおり歩きながら聴くには完全にオーバークオリティだ。音圧が高いのも心地よく、アナログ再生機ならではの響き具合で楽しめる。使っているテープがTDKのADなのが、また泣けてくるぜ。

こうして聴いてみて、NOKKOさんの歌ってデジタル移行期はつらかったのではないかなと思ったりした。ああいうビリビリくるほどの音圧の声は、当時のデジタルだとどうしても再現力が弱かった。音圧が滑らかに変化しながら、波状攻撃のような連鎖でぶつかってくる声は、超アナログ的な魅力であり、アナログ機器がその威力を発揮する。ちょうどこのアルバムの年が、アナログ盤がCDを上回っていた最後の年だから、レコーディング現場ではすでに試行錯誤はあっただろう。ただ、こうしてあらためて大好きな『プライベイト・ヒロイン』を聴いて、この曲に関してはあまりデジタル的な意識はしていないような、NOKKOさんの音圧バキバキの歌唱で攻めまくっているのが心地よい。その攻めの音を、くどいようだが昭和54年のハードが十分に感じさせてくれる。僕らはなんていい音に囲まれていたんだろう。

この後CD全盛になり、しばらくはペラペラのゴージャスサウンドが世を席巻した。多分、80年代中盤のCDをCDウォークマンで聴いたら、今だったら放り投げるだろう。でもね、当時はこんなに澄みきった音は聴いたことがないと狂喜乱舞したのだよ。耳が悪かっただけかもしれないが、少なくとも僕は決して否定しなかった。デジタル技術が急激に入り込んできたときに、一瞬だけ音質が変わったということで、新鮮味を感じたのだ。当たり前のことだけど、それ以前は人類史とほぼ同じ期間をアナログ音源で音楽を楽しんできた。だから今にいたって、世の中の求める音がアナログ的な音質に回帰しているのもごく自然なことで、人類が音楽とつき合って来たなかでもっともドラスティックな音質の変化の瞬間を目撃できたことは、僕らの特権と思えばいい。むしろ痛快じゃないか。

79年に発売されたウォークマンの試聴で、こんな壮大な時間の旅に出てしまった僕だ。さあ、とっとと仕事しろっ!!

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