12月に聴きたいアルバム “ザ・ベストテン” 。ローリング・ストーンズ『刺青の男 (Tattoo You)』。

ローリング・ストーンズ 刺青の男師走にふさわしいアルバムを10枚セレクトして、不定期連載でご紹介してきた。思いのほか長い連載になってしまったがいかがでしたか? 音楽にこだわりを持つ昭和40年男のために選んだつもりだが、とんでもなく無節操なセレクトになったのは僕自身が雑食だから。それに加えて、12月に聴く音楽に対して、なんとも特別な意識を持つからだろう。中学時代から「このアルバムを聴くのは今年最後かもしれない」なんてつぶやきながら、レコードやカセットテープでアルバムを聴き込んでいたのがまるで昨日のようだ。CDに変わったものの、意識は今も変わらない。

連載を締めくくるラストのアルバムは、お馴染みローリング・ストーンズから意外や意外と思われるかもしれない『刺青の男(Tattoo You)』をおススメする。ストーンズは70年代に入って『スティッキー・フィンガーズ』『メイン・ストリートのならず者』あたりを頂点に、徐々に作品がつまらなくなっていった。そして極めつけだったのが80年にリリースされた『エモーショナル・レスキュー』で、FMの全曲紹介番組でエアチェックしたから、買わなくて済んでよかった作品である。ストーンズがもっとも苦しんでいた頃だろう。もうこのままストーンズは過去の遺産になるんだろうなと思わせた。とはいえ、しばしばこのブログでふれているが、ダメダメアルバムってわりと好きだったりする僕で、後になってCDで入手している。このアルバムも頭の『ダンス』やラストのキースのボーカルによる『オール・アバウト・ユー』なんか大好きで『サマー・ロマンス』なんかもお気に入りだったりする変態!?っぷりだ。ただ、ダメダメ感は色濃く出ていてかなり厳しいのは事実だ。その前の『女たち』もかなりおかしなアルバムだったから、もうダメだとの烙印を押すのは自然なことだった。

ところがどっこい、翌81年にリリースされたこのアルバムは完全に息を吹き返した。ストーンズはやはりストーンズだったのだ。『スタート・ミー・アップ』のカッチョよく前向きなリフは、ストーンズ健在を示すシンボルのように鳴り響いた。「死んでたまるか」と。ラストの『友を待つ』も、名曲としてファンから愛されている。80年代の傑作がこのタイミング出たことが、その後に繋がるモンスターバンドの地位を揺るぎないものと決定づけた1枚だ。

『レット・イット・ブリード』や『べガーズ・バンケット』と比べちゃいけない。時代が違うし、メンバー間にある緊張感がまったく異なり、さらに若さという武器もあったわけだから。比較するなら『女たち』であり『エモーショナル・レスキュー』なのだ。その2作に比べたら明らかに骨太な仕上がりになっている。

なんで12月なのか。それはやはり『スタート・ミー・アップ』によるところが大きくて、あのイントロがなんともお正月っぽいのである。だったら1月じゃないかと突っ込まれそうだが、厳密にはもうすぐ新年を迎えるぞといった響きを感じるのだ。そして、きっと新しい年はキミにとってすばらしい1年になるぞと聴こえる。ストーンズの数ある名曲の中で、ただひたすらに元気になれる曲はない。影が合って、テンション感が強くて、緊張感があるのがストーンズだから、『スター・ミー・アップ』は不思議な存在の名曲なのだ。

今日の夜中に、街はクリスマスから新年の飾り付けに早変わりする。いよいよ今年もカウントダウンだなって意識でこのアルバムを聴いてみてほしい。そう、今夜はまだ昨日ご紹介したマライヤ・キャリーの方がいい。明日以降が旬の『刺青の男(Tattoo You)』のご紹介をもってして、暮れの10枚セレクトを終了とさせてもらう。ご清聴、ありがとうございました。

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