奥深きデザインの世界。

夏のバイクイベントでおもしろい仕事を引き受けた。今年10回目を迎える『バイクのふるさと浜松』とのイベントで、国内4メーカーのなかで、ホンダ、ヤマハ、スズキが浜松発祥であることから始まったものだ。各メーカーのニューモデル展示や各種コンテンツを仕込んだバラエティに富んだもので、そのなかでも核となるトークイベントでコーディネーターを務める。

今年のテーマが『バイクとデザイン』となっていて、このトークショーもそのテーマに乗っとって各メーカーのデザイナーがトークバトルを展開するというものだ。先日、顔合わせを兼ねての打ち合わせがあり、熱い議論を交わしてきた。各メーカーを代表して出てくるデザイナーたちだから話はもちろんおもしろく、勉強になる。とくにデザインのヤマハと呼ばれる立役者である、一条厚さんとご一緒できるのは幸せの極みだ。知る人ぞ知るヤマハ『V-Max』のデザイナーであり、ヤマハの数多くのモデルを生み出してきた方だ。バイクのデザインほどおもしろいものはないと言う。たしかに、機能をむき出しにしたブロダクトであり、しかも単純にデカイからデザインするべきポイントが多い。バイクのデザインではエンジン形状までもがデザイナー領域であり、比較するとクルマにしろ、電車、飛行機なんかも機能は奥にしまい込んであって、包み込む部分をつくっていることになる。重要度はもちろん大きいが、バイクの場合はデザインが製品そのものであるとのアピール部分が多い。以前、クルマのデザインからバイクに移った方の話を聞いたときに、バイクの方が作業領域が多くて断然おもしろいとの言葉を漏らしていた。

昨今、さまざまな場面でデザインの重要度が上がっている。バイクも然りで、最近の若い子たちに話を聞くと決定要因はデザインだとよく聞く。速度や出力を競っていた我々のハイティーン時代とは変わり、性能の差異が出しづらくなっているうえ、ニーズも低くなった。開発陣は環境技術やコストカット、軽量化などが力点となり、性能は主に乗り味の部分で、最高出力競争ではなくなっているから、選択する側のファクターでデザインの重要度が増すのは自然なことだ。するとデザインのヤマハと呼ばれるのだから大きなアドバンテージを持っていることになるが、話はそうそうカンタンなものでない。

ここで大きく立ちはだかる問題はグローバルである。現在どのメーカーも国内モデルなど出す余力がない。為替とEU危機が大きく立ちはだかり、アジアが主戦場になっている。先日このブログでも紹介したスズキの『GSR250』のように、アジア戦略モデルがそのまま国内やEU圏にも投入され、デザインのグローバル化が求められることになる。アジアでもヨーロッパでも、そして日本でも支持されるデザインとは? どう考えても困難な道だろうが、国内メーカーはこれを求められる。難しいテーマだが、今回のトークショーではここにも斬り込んで話を展開することにした。興味のある方はぜひご来場を。

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1件のコメント

  1. 「部品」だからとダンマリを決め込める領域まで踏み込まねばならないので俄然やる気が起きると、以前自転車をデザインした工業デザイナーから聞きました。オートバイはいっそうそれが顕著だろうなあ。本田宗一郎が昔標榜した、「神社仏閣デザイン」ってそのへんまで天才的に見越していた気がします。

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