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石川さゆりさんの『天城越え』

2012 年 7 月 17 日 プロデューサー コメント

誌面連動企画『3番勝負』の解説をお送りしている。昨日は『風雪ながれ旅』についてつらつらと書き、紅白でやってほしい曲ナンバーワンだと書いたが、僕にとってもう1曲、ナンバーワンがある。それが『天城越え』だ。この2曲を紅白で聴けることで、史上最強にしてもっとも涙あふれる大晦日となるのだ。名曲ゆえ登場回数は多い。『天城越え』が86・97・99・02・05・08・10年の7回で、一方の『風雪ながれ旅』は81・96・03・05・10の5回だ。このうち05・10年は両曲聴けた奇跡の紅白だった。さらに記憶に新しい10年は、直接対決といえばいいだろうか表裏で2人のすばらしい競演となった。ましてやその前が桑田さんの復活披露で「えがったえがった」とウルウルしているところに、この2曲が響き渡った名シーンだった。いつか2人のトリでの対決を見たい。熱烈リクエストだよ、NHKさん!!

サブちゃんもさゆりさんも、まさか2年連続で同じ曲を歌うことはないと、去年の暮れは完全に諦めていた。だが僕はすばらしい番組と出会ったのだった。なんと去年で第44回を迎えたというのに、これまで完全にノーマークだったテレビ東京による『年忘れにっぽんの歌』である。夕方5時に放送が始まり、紅白参加のとくに演歌系の歌手が7時までズラリと並ぶ。ここで前年に引き続きこの2曲が聴けてもう酒の進んだこと。おかげで去年の大晦日は、年が明けて30分ほどで眠りについてしまったほどだ。

紅白と比べると気合いの差はある。だがそれは紅白での熱唱を見たから比べてしまうと感じるレベルで、十分に大晦日らしい熱唱だった。この番組はこれからの人生において、定番となった。とまあ、この夏真っ盛りに大晦日の話を延々と書いているのはいかがなものかとも思うが、この2曲を選んだのは紅白を意識しての対決に他ならない。

気を取り直して『天城越え』。僕らにとってさゆりさんといえば『津軽海峡冬景色』がまさに幼少の演歌原風景であり、CMソングで接した『ウイスキーが、お好きでしょ』も印象深い。おさらく『天城越え』をリアルタイムでスゴく好きだったという昭和40年男はほとんどいないのではないか。昭和61年発表ということだから、バブルに向かっていくなかでおしゃれなことをドンドン取り入れていたころだ。DCブランドに身を包み、ローンで買ったクルマを乗り回して、ホットドックプレスで学んだとおりに女の子を落とす。そこまでいかなくとも、昭和40年男たちにとってもっともエキサイティングでバラ色の頃じゃないだろうか。そんな頃に♩あなたを殺していいですか♩なんて、好んで聴くはずがない。僕もこのころは紅白をまともに見ていない時期だから、86年に歌った『天城越え』は記憶にない。

僕がこの曲と出会ったのは、バイト先の呑み会でカラオケに繰り出したときのこと。東北出身の女の子が歌っているのをなんちゅー曲じゃと、そのたった1回で強烈に記憶した。が、まさかロック野郎が演歌のCDを買うはずがなく、そのまま記憶のなかにしまっていた。やがて大人の階段を登りながらだんだんと演歌を受け入れ、紅白が楽しみなおっさんへと成長してさゆりさんに心を委ねたのだった。

さらに大人の階段を昇り、仕事でクライアントと呑む機会が増え、強烈な宴会芸が必要になっていた。手っ取り早くカラオケでの芸を持つのは効果が高い。『金太の大冒険』がその代表格だろうが、すでにこれは切り札にしている男たちが多く太刀打ちできない。そこで僕は『天城越え』に手を出した。AメロBメロは静かにこなし、♩舞い上がり〜♩から絶叫マシンに豹変する芸を考案し、各地のカラオケスナックを恐怖のどん底へと陥れた。クライアントにとっては、その恐怖を演じているのが身内であることが痛快らしく、やがてカラオケ大会にマシーンとして招待される機会が増え、『天城越え』はその大トリを務めるようになり、僕は今の地位と名声(!?)を得たのだ。

半ばギャグにしてしまってさゆりさん以下、関係者の方の前では絶対に披露できないが、絶叫しながらホントにすばらしい楽曲だなと感動する。そしてさゆりさんの、サブちゃん同様の絹のような歌を聴くたびに唸ってしまう。大晦日に聴きたい曲ナンバーワンとしたが、この2曲は僕にとってそのまま演歌ナンバーワンソングなのである。さあ、皆さんの気分はどっち? 今すぐ投票だーっ。

 

 

   

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