表紙づくりの現場便り。

前々号と前号が、これまでになくいい流れとなっている。それまでだって決して悪くなかったものの、平均よりはいいよねという数字が続いていた。が、去年の隔月発行宣言をした第6号の発売日当日に震災が起きてしまい、創刊以来最も悪い数字となってしまったのだ。まだ創刊間もない雑誌にとっては痛い結果だった。

その後もしばらくはホームランを出せずにいたが、前々号の特集『憧れモノ大全』で臨んだ第10号はこれまでにない実売率をはじき出し、前号の『熱源』第11号も好調だとの報告が届いている。ちょっとそれるが、雑誌の精算には結構な時間がかかり、正確な数字をつかむには発売後約3ヶ月を要する。返本の数によっての精算となるため、星の数ほどある書店の結果を待つ。また、大型書店などは在庫量も魅力のだから数冊残していることがあるためどうしても時間がかかるのだ。であるから、前号の結果はまだ待ちの状況だが、ほとんどの大型書店に導入されているPOSシステムにからの情報ではかなりいい数字にまとまりそうだとのこと。また、読者さんの反響からしても、いい結果だとのことはほぼ確実だろう。

こうした流れを受け、問屋さんも次が勝負で上昇気流に乗るんじゃないかと言い始めた。これまでにも、こんな経過で部数を急加速させた雑誌がいくつもある。毎号少しずつの見直しや新しい空気を送り込むようにして、守りに入らないようにしてきた。ときには前号を裏切ることをよしとした。僕は「うちの読者」という言葉が大嫌いで、そんなありがたいお客さんなんかいないと思うようにしている。毎号が勝負であり、よくなかったら次からは買ってもらえない。いつも悩み抜きながら、成績が良かった第10号とずいぶん異なる勝負に出た最新号は、これこそ前号を完全に裏切っている。我ながら笑ってしまうほどだ。

昨日も協力者の方と本誌を前にして意見交換をした。「ウォークマンやキヨシローさんなら(表紙で)手に取る機会はあったかもしれないけれど、フラッシャーはないだろうな。今までだってこんな表紙はなかったでしょう」。この特集が決まった瞬間から、表紙の写真はフラッシャーでリクエストしていた。それに応えるように何日も部屋にこもり、これらのカットをフレームに収めてくれ、何パターンもの表紙を組み上げ(ここに上げたのは完成直前のホンの一部だ)決定した。バカバカしいことを本気でやるとおもしろくなる。おもしろいものが支持される。とどのつまり熱量がいかに込められているかが、裏切りを超越して支持されることだと確信している僕だ。

入魂の写真に対してタイトルはすごく悩んだ。“チャリンコ”の単語は使いたかった。ただ大きな弱点が2つあり、ひとつは地方によって呼び方に微妙な差があること。これはまあ、押してしまえで済ませてしまった。もうひとつは、文字量が多いこと。表紙の表現に落とし込む際は大きなネガティブになってしまう。というのは、文字数が多くなればなるほど文字を小さくすることになり、インパクトが減る。かといって『チャリンコ』だけでは成立しない。少ない文字数のシンプルな言葉をひとつかましてタイトルにしたく、『夢のチャリンコ』で進めていた。だがイマイチなのは重々わかっていて唸る日々だった。しか~し、締切の5日前“愛しの”が降りてきたのだ。おーっ、しっくりくるじゃないの。時代感もマッチするし、俺たちのあの日もピッタリと合う。よっしゃー、決まったぜとワクワクした瞬間だった。たかが1つの言葉が、もやもやを全部すっ飛ばしてくれ、大きな達成感を連れてくる。こうして裏切りの表紙はでき上がったのだ。

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