スポーツ対決に見る昭和の風景。

あれれ、読者投票企画の3番勝負が盛り上がってないじゃないの。『懐かしのスポーツ選手対決』とした今回も素晴らしい対決を仕掛けたので皆さん奮ってご参加ください。それでは遅ればせながら解説なんかしてみよう。

ボクシングのタイトルマッチは、我が家のお茶の間の一大イベントだった。放送時に見せる親父の興奮ぶりは、昭和7年生まれであることが大きく影響している。腕っ節1本で世界の頂点に立つことをいつも最大評価していたバックボーンには、日本がひっくり返された敗戦経験があったようだ。そんな想いをお茶の間に持ち込んでいた親父につき合って見たブラウン管に燦然と輝く2人が、輪島功一さんとガッツ石松さんだ。ど根性をめいっぱいさらけ出していた。勝てないといわれる相手をなにがなんでも倒すがむしゃらな姿勢は、昭和40年男にとってベースと呼ぶにふさわしいものでないだろうか? うーむ、甲乙付け難し。

続いての王さんと田淵さんはそのまま巨人阪神戦ですな。これまた我が家の話で恐縮だが、江戸っ子の親父は巨人ファンであり、その熱狂ぶりにあきれた僕はいつの間にかライバル球団である阪神を支持するようになっていた。小学校でもクラス中がほとんど巨人を支持していたことも大きく、なんだか同調する気になれないことがタイガースファンとなった原因であり、決して田淵さんや江夏さんに痺れたわけでなかった。後に掛布さんが活躍するようになって好きな野球選手の筆頭になり、晴れてあまのじゃくタイガースファンから本物の虎キチになった。おっと対決に話を戻そう。僕らは幸せだね。こんなバカバカとホームランを打つ選手が同じリーグに2人もいて、ブラウン管から真剣勝負を見せてくれたのだから。多くの昭和40年男たちが野球好きになった原因となる2人だろう。まったく違う軌道を描いてスタンドに突き刺さる2人の打球は、子供たちに夢と興奮を与えてくれた。田淵さんの通算ホームランは474本で歴代10位の記録ながら、僕の印象では王さんの次に偉大なホームランバッターであることは今もなお変わっていない。

そして3つ目の対決はお相撲からで、貴乃花関を絡ませるか悩んだもののやはりど真ん中ストレートの二大横綱対決にした。強過ぎるジャイアン北の湖関に対して、色男の輪島関が成敗するかのような構図は、大相撲人気を支えた。当時の僕らにとって、相撲は夢中になったわけではないものの、いつもテレビに映っていてなんとなく見ていた。大人たちが一喜一憂する姿にあまり意味を感じなかったものの、原風景となって心に残っている。その象徴的な2人だ。年齢を重ねていき、原風景を思い起こすように興味の対象になってきて、僕自身が相撲を好んで見るようになったのは、若貴フィーバーのずっと後でここ10年にもなっていないだろう。長い時間の重みの中で続けられていきた国技である相撲は、その重みがわかる年齢や嗜好にならなければ興味の対象にならないのかもしれない。

さてさて、皆さんも自分の過去へと旅を楽しみながら、じっくりと選んで投票してほしい。

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